お絵かき掲示板Art.netイラスト講座>お絵かき掲示板テクニック集 vol.7『着物の描き方』ぺんたさんの場合

投稿イラスト講座vol.7『着物の構造と描き方』

ぺんたさん 制作日:2008年6月20日

はじめに

こちらでははじめまして。いつもお世話になっております、ぺんたです。

さて、練習板のほうで、着物の構造等についての解説がほしい…というご要望がありましたので、日頃着物を着ている立場から、着物の基本的なしくみや、決まり事、着方などについて講座をさせていただくことにいたしました。
着物をご自分で着たことのない方は、資料写真等をごらんになっても、おそらく、「このパーツはどこのナニが見えているのだろう…」と謎また謎、ということが多いと思いますので、この講座でおおまかな形などを覚えてご参考にしていただければ幸いです。

イラスト

1 着物の構造

 まず、着物の仕組みから。
着物を着るときは、原則として、(1)肌じゅばん(もめんのシャツのようなもの)の上に、(*2)絹製のお襦袢(おじゅばん)を着て、さらにその上から、(3)絹製の着物を着ます。
(*2)のお襦袢には、半襟(はんえり)といって、そこだけ外して付け替えができる絹の小さな布が別に縫いつけてあります。
衿のところは、直接肌に当たるので、汚れやすいから取り外し式になっているのです。
図では、水色のところが半襟です。

半襟

(*2)(シルクのシュミーズという位置づけ。
昔の人はネグリジェとしても使いましたので、コレを他人に見せる、ということは、その人と恋人同士、ということです)

 右図左下の女性は、お襦袢だけ着ています。
お襦袢は、そのまま着ても、足首までのちょうどよい長さになるように作られています。
お襦袢は、伊達締めといって、10センチ巾ぐらいの薄いリボンのようなもので縛って着ます。

 右図右上は、着物の構造です。着物は、おおざっぱにいうと、すべて同じくらいの幅の布地を直線的に縫い合わせて作ってあります。
ですから、図のAとBは、ほぼ同じ幅です。
胴体部分の背中側も、Bと同じ幅の布が二枚、背中の真ん中でタテに縫い合わせてあります。
ただ、それだけだと、バストのふくらみとか、歩いた時の膝の動きで体の前側がはだけてしまうので、Cの細長い布(おくみ、といいます)を前側の左右にそれぞれ継ぎ足ししてあります。
Cの幅は、だいたいAとかBの半分ぐらいです。

 その結果、絵としてはどうなるか、といいますと、図のお襦袢のお姉さんもそうなのですが、袖じたいは、人体の袖口から二の腕のまんなかあたりまでしかないことになります。
二の腕から首までのラインは、身頃の生地で構成されています。
着物の絵で、洋服のようにちょぅど肩のところに縫い目がくるように描くと、それだけでうそになってしまうので要注意です。

着物の基本構造と長さの割合

ただし、13歳ぐらいまでの子供の着物とか、舞妓さんの着物には「肩揚げ」といって、ちょうど肩山のあたりをつまんで作るタックのような折り目が入ります。
これは、縫い目ではなくて、ちょっとつまんであるだけです。
とにかく、大人の着物と子供の着物は、肩のところの見た目が違うので気を付けてください。

 また、着物の袖は、洋服のように体に合わせて縫製されておらず、完全な長方形です。曲線的に着物のそでを描くと、かえってうそっぽくなってしまうのでこれまた要注意です。
 なお、本当の着物の場合、この右上の図解のように、おくみと上前で違う色を使う、ということはないのですが、今回はどのパーツが着たときどこに見えるか、ということをご理解いただくため、体の右側と左側で色を変えて、わざとパーツごとにどハデな色をつけてあります。

2 着物の着方2種類

 お襦袢を着たら、いよいよ上から着物を着ます。(なお、ユカタのときはお襦袢を着ません。)注意してほしいのは、「ユカタ以外の絹の着物のときは、お襦袢の上から着物を着るので、えりのところは、二重に見えるのが普通である。」ということです。
絵でいうと、水色がお襦袢の半えり、薄いオレンジが着物の衿になります。
(なお、本当の着物では、着物の衿部分は、着物のお袖や胴体と同じ色になります。)

ときどき、振袖の絵なのに、お襦袢のえりが見えていなくて、下着のままでいるみたいな作品がありますのでお気を付けください。
「えりは2つ描く」が原則です。
 さて、着方ですが、これには2種類あります。
(わかりやすいように、帯をしめていない状態で説明します。)

右図/左側・お引きずり

 時代劇とか、芸者さん、舞妓さんのお座敷衣裳とかの着方が左側の「お引きずり」です。
(本当は、お引きずりをするときは、すそのふちっこに綿の入った、専用の着物を着ます。)
 着物は、もともと、着る人の身長と同じ長さに作りますので、肩に羽織ると、ちょうど首から頭のてっぺんまでの長さだけ、床に引きずります。
この状態でヒモで縛り止めてしまうのです。
すると、体の前側は、着物の裏側がひっくりかえって三角形に見えます黄色い部分…裾裏、といいます。)
ここは裏地なので、違う色で塗ります。
ただし、このかっこうで外に出たらドロドロになって大変ですので、外に出る時は、裾をもちあげて、ウエストで別のひもで縛って止めたりします。

右図/右側・おはしょり

 明治ころになると、お引きずりは不便だ、ということで、最初からヒモでたくしあげて、その上から帯をしめてしまう着方が主流になりました。
これが「おはしょり」です。

おはしょりというのは帯の下の横線部分。
ここで、着物をたくしあげて、かかとまでの長さにしているのです。
右側の着方がおはしょりありの着方です。
裾のところの見え方が違うのがわかるでしょうか。

お引きずりとおはしょり
着物各部名称

体の前側に見えているのは、ほとんどが左半分の緑色の「上前」と、そこに接続している「おくみ」だけです。
右側の半分(ビンクのところ、 「下前」)は、上前の下に重なってしまい、見えません。
 ですから、おはしょりのある絵を描いているのに、裾のところだけ、裾裏が出ている、というのは(その女性が裾まくりをしている、という絵でない限りは)おかしいことになります。

3 帯の巻き方 その1

 さて、着物以上に謎なのが帯ですよね。
よくある「幅広のベルトの上からクッションをしょったみたいな」絵にしないためには、構造を覚えてしまうのが一番です。

 帯は、幅が30センチぐらいの、長い布です。
これを、胴体に2周巻きます。
巻くときは、半分の15センチぐらいに二つに折って、折り目が下側になるように(上から折り目に物を入れられるように)胴体に巻くわけです。

 何回巻いたら2周?というと、体の前側が二重になればOKです。
そして、帯の両端が背中側にくるようにして、そこで1回結びます。
結んだはしっこのうち、みじかいほうを「て」、長いほうを「たれ」といいます。
この「たれ」で、あのクッション部分を作るのです。
そこで、「たれ」はもとの幅に広げておき、「て」のほうは半分に折ったままにします。
 図ですと、胴体の「あ」と「て」の「い」は、どちらも半分の15センチ巾、「たれ」の「う」は30センチ巾です。

帯の巻き方 その1

4 帯の巻き方 その2

 背中のところで一回結んだら、とりあえず「て」はほうっておいて、「たれ」で形を作ります。
そのときに使うアイテムが、お弁当箱ぐらいの大きさのミニクッション「帯枕」です。
これを、「帯揚げ」という細長い絹のスカーフのようなものでくるんで、「たれ」の中に入れ、形にします。
ややこしい作りなので、右図:左側断面図を見てください。
「たれ」の布地がいったりきたりしてクッション形になっているのがわかるでしょうか。
緑色の帯枕を、紫色の帯揚げでつつみこむようにして、「たれ」のゴチャゴチャ構造のいちばん上に入れて、体の前側でしばってしまいます。
そのあとで、ほうっておいた「て」を、「たれ」の空間の中に通します(右図:青色点線矢印)。


5 帯の巻き方 その3図

帯の巻き方 その3
4 帯の巻き方 その2図
帯の巻き方 その2

5 帯の巻き方 その3

 さて、後はせっかく作ったクッション形がくずれないように、縛り付けるだけです。
縛るアイテムは2つ、さっきの「帯揚げ」と「帯締め」です。

帯締めは、組紐とか、中に綿を入れた絹のひもです
図では暗い赤色)。

ポイント
 帯揚げは、うしろで帯枕をつつみこんでいる。
前側で結んでその端は帯の中に入れてしまう。
 帯締めは、「て」の上、「たれ」の下をとおって、胴体全体を縛っている。
ということです。

 よくある不自然な絵は、「て」を描いていなかったり、「帯締め」がどこをとおっているやらわからなかったり…という点が失敗の原因と思われます。


6 着物姿全体のおさらい

 さて、ようやく着物が着られました。
「なんだかへんな着物」「だらしない着方」にならないためのチエックポイントです。

  • (1) えりは2つ(2重に)描いてありますか?
    図で水色にした「はんえり」は、現代では普通は白色で、時代劇や舞妓さんは、刺繍をしたり、絞りだったりしてハデな色です。ただし、芸者とか、大奥の偉い人は必ず時代劇でも白です。これは、白無地がいちばん正式な色だからです。
  • (2) お袖は、肩とヒジの中間ぐらいからはじまっていますか?
  • (3) お袖を腕の形に合わせて描いたりしていませんか?
  • (4) えりを後ろにずらしてありますか?
    (なお、男の人はずらしません。)
  • (5) おくみの切替線を前身頃に入れましたか?
  • (6) すそが下へいくほどすぼまるように描きましたか?
    (すそが下にいくほど広がる着方を、「ちょうちん」「あんどん」等といって、とても恥ずかしい着方とされています。)
  • 7 すそがX形にクロスするように着せましたか?
    (すそのラインがこれと逆の形になるということは、つまり裾が広がったあんどん状態か、または着崩れてぐすぐずなのかのどちらかです。)
まとめ

あとがき

さて、なんだか着付け講座みたいになりましたが、少しでもお役に立てましたら幸いです。
そのうち機会がありましたら、また「花魁の衣裳についての決まり事」「芸者、舞妓の衣裳のルール」「平安時代のお衣裳」などもできたらいいな、と思っています。
ご観覧ありがとうございました。

このイラスト講座は役立ちましたか?  CTぱちぱち。

着物の描き方1 | 着物の描き方2 | 日本髪の構造と飾り | ぺんたさんの絵師名簿


お絵かき掲示板Art.netイラスト講座>投稿イラスト講座vol.7『着物の描き方』ぺんたさん