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四方針守護士〜兵士と王女の物語〜【第三章】

6章 6頁 完結 「テキスト」

時の聖地、クロクラムへとやってきたエマル。
二人目の守護士、ジーク・ライドは自分の長年探してきた男だったが、彼は体の中に化物を宿していた。
大切な恩人が苦しむ中、エマルの取った行動とは……

作者. シロガマ さん


  連載No.000050 登録:2014/03/06 〜 更新:2014/03/10 (0 Res. ,)

第十六話 『女守護士』



ジークの件から翌朝の事。ベッドの中でエマルはパチッと眼を開き、ゆっくりと体を起こした。

「……はぁ」
壁に掛けられた洒落た柱時計を見ると、時間はまだ四時を過ぎたばかり。
―――あれから、ほとんど眠れなかったな……
それと言うのも、やはり彼の事が気になってしょうがなかったからだった。エマルはベットからゆっくり下りると、両手開きの窓を開け外を見た。空はまさに自分の心の内を映しているかの様、黒い雲に覆われ、次第に雨も降って来そうだった。
「……」

・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

コンコン……コンコン
エマルのヘアをノックする給仕。引いて来たワゴンの上には香ばしく焼き上がったパン。メインに、サラダ、スープにデザート。朝食とは思えない程の豪華な食事が用意されていた。
給仕・「エマル様。お食事をお持ちしました」
……………。
給仕・「エマル様?」
もう一度ノックしても返事が無い。まだ就寝中かしら?
どちらにしても、もう起きてもらわなければならない。給仕は静かにエマルのヘアのドアを開けた―――――――――――だが。
給仕・「あら?」
ヘアには誰もいなかった。ベッドは綺麗に整えられ、窓だけが開き、風でキィキィと揺れていた。

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「……」
目の前に広がった光景にエマルは息をのんだ。
――ここが、あの【再会の湖】?
再会の湖……昨日の美しい湖の面影は微塵も残っていなかった。湖を囲んでいた岩壁は所々落石状態。湖の水も、ジークさんの爆発的な殺気でほぼ吹き飛んでしまっていた。地面は地盤が剥がれ、岩や石が散乱し、歩くのも困難な状態。もう荒れ地以外の何物でもない。――なんとか歩けそうな場所を見つけながら、私はゆっくりと足を進めた。
キラッ
?――――岩の間で何か光った気がした。あれは……
私は岩の間をすり抜け、上を飛び越え、なんとか光の元へやってくると、それを上から見下ろした。
「これ、ジークさんの……」
岩の間から顔を覗かせていたのは、ジークさんが脱ぎ捨てた軍服の装飾品。首元に付けていたブローチ型の時計だった。
「無事だったんだ……」
――手に持ってみると意外にずっしりしていた。細かい傷は付いているものの、ひび割れてもいないし、凹んでもいない。丈夫に出来ている。よく確かめてみると、針はちょうど三時のまま動いていない。元々動いていないのかな? 確か、レ二―君もローブの留め具として同じような時計を身に付けていた様な……他の兵士達は付けていなかったし、もしかするとこの時計は四方針守護士としての証なのかも。―――だとしたら大事な物だろうし、いつかジークさんと再会した時に返した方がいいわ。
そうだ。ジークさんの物がここに放置されているなら、もう一つ回収しとく物がある。彼が常に肩に担いでいた長槍。大事そうに持っていた物だし、あれも回収しとこう。
ポッ……ポツッ
その時、頭に冷たいモノが当たった――――雨?
とうとう降り出してきてしまった。本当はほんの気晴らしの散歩ですぐに帰るはずだったのだが、無心で歩き続けた結果、気がつけばこの場所付近まで来てしまっていた。あんなに疲れたのに、今回は無意識だったせいかあっという間だった気がする。
「急がなくちゃ」
私はその後も辺りをくまなく探し続けた。とがった岩で指を切ったりもしたが、そんな事はお構いなしに探し続けた。――数十分後。
「見つけた!」
主と離れ離れになったその槍は、物悲しい雰囲気を漂わせ岩の下敷きとなっている。
「待ってて、すぐに出してあげるから、ねっ!!」
その物悲しい雰囲気のせいか、私は喋るはずもない槍に向かって語りかけ、同時に精いっぱい岩を押した。自分の身長ぐらいある岩。当然ながらびくともしない。槍自身を引っ張り出そうともしたが
「んぎぎぎっ!」
やはり全く動かない。しばらく頑張ったが、数センチも動かせずに私は力尽き、その場に座り込んでしまった。
「はぁ、はぁっ、どうしよう……私じゃ無理だわ」
これは誰か呼んで岩をどけてもらうしかない。
「くしゅっ!」
雨も徐々に強くなってる。城のみんなにも黙って出て来てしまったし、もう帰らないと。
「待っててね、必ずまた来るから」
私は立ち上がると、忌々し気に岩をペチと叩いた。
――こんな岩なんか、ジークさんにかかれば余裕で退かせるんだろうなぁ。
「……」
その名前を思い出すと、また気が滅入ってくる。――彼は今どうしているのだろう。私はまた、何も出来ずに彼の無事を祈る事しか出来ないのだろうか。いくら国王様がついていると言っても、やっぱり不安は晴れる事はない。
私を色んな意味で救ってくれた恩人、ジークさん。一人ぼっちの私といつも一緒にいてくれて、母との溝も埋めてくれた。影の化物から身を呈して助けてくれた。彼がいなければ、母との溝は埋まる事は無かったし、それ以前に誰も信じられなかった。そして何より、私はすでにこの世にいなかった。
「……」
私は辺りを見回し、手ごろな大きさの石を見つけると、再び地面を掘り出した。地盤がえぐれ地面も結構もろく、隙間が出来ているおかげでなんとか石で穴が開けられそうな状態だった。
「誰かにばかりっ、頼ってなんか、いられない!……私だって、自分の力で、恩返しをしないと!」
これ位では恩返しにもならないだろうけど、とにかく彼の為に何かをしたかった。エマルは必死に地面を掘り続ける。


?・「へぇ……ただの甘ったれたお嬢さんって訳でもないようだねぇ」


突然私の後ろから声が聞こえた。
「誰っ!?」
バッと振り返り、声の主を探した。だが真後ろには大きな岩があるだけ。
?・「上だよ、上」
「?」
聞こえて来る言葉通りに私は上を向いた。だが途端に雨が目に入り、目を開いていられなかった。
スタッ
「っ!?」
声の主らしき人物が私の目の前に下りてきた! 私は急いで後ずさり、慌てて目を拭った。――再び目を開けた私の前にいたのは……
「え?」
?・「はぁい♪」
その人は褐色の肌をし、戦闘服という男らしいカッコ。割れた腹筋にたくましい腕。実に男らしい……のだが、この人が男ではない事はすぐに分かった。くびれた腰に何より、ふくよか過ぎる胸。プロポーションの良さに女の私でも見とれてしまうほどだった。
?・「アンタ、エマルだろ?」
突然見知らぬ人に名前を呼ばれて驚いた。
「えっ、あ、はい!―――――――あのぉ……」
?・「話は後だよ。そこ、どいときな」
肩をポンと叩かれ、私は訳も分からず素直にどく事にした。
この人は一体―――――――あっ!
すれ違う彼女の腰に、色違いだが時計がついている。まさか……
ズザッ!
彼女は岩の前に来ると、体勢を低くし、動かなくなった。
?・「………」
「???」
そのまましばらく動かなかったが、突然目をカッと見開くと
?・「どらあっ!!!!!」
(っ!?)
ドゴォッ!!!!!!
凄まじい掛け声とともに繰り出された一振りの蹴りが岩を真っ二つに割った。
「う、そ……」
ポカーンと呆気にとられる私。しゅ、守護士と言うのは、こうもみんな化物並みの強さを持っているのか……
「――あっ」
そう思っている間にも割れた岩の間からジークさんの槍が姿を現す。
?・「ふぅ……」
一息付きながら私の方を振り返る女性。私は顔を引きつらせながらお礼を言った。
「あ、ありがとう、ございます」
?・「なぁに、アタシの方こそすぐに手伝わなくて悪かったねぇ」
「え?」
?・「いやね、実は結構前からアンタの行動を見させてもらってたんだ。アンタがあの時点で諦めていたら、アタシは手を貸す気はなかったよ」
「そうなんですか?」
?・「ああ。女だからって、ただ誰かの助けを待ってる奴、アタシは大嫌いでね」
「……///」
その言葉に、なんだかこそばゆくなる。
?・「だけどねぇ……」
彼女は槍を見て意味あり気に苦笑した。
?・「残念だけど、この槍はアンタには担げないよ」
「え? どうしてですか?」
?・「試しに持ってみな」
彼女に促され、私は試しに槍を握ってみた。
ズシッ!!
「なっ!?」
全く持ち上がらない! 岩の下だからと思っていたけど、この槍って……
?・「どうだい?【300`】の槍、城まで持って行けそうかい?」
「……」
答えが分かっていて意地悪な質問をしてくる彼女に、私はうらめしい表情を向けた。
?・「あっはっは!! まぁそんな顔しないどくれ。その槍を方手で振り回せるのは、この国ではあの方ぐらいだからねぇ」
確かに、これは普通の人では到底無理だろう。さ、300`って……

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雨に濡れた体を温める為、私は彼女の納める【六時の塔】へと案内された。そこは私がこの地へ初めて送られてきた時に一番近くにあった丘の上に立つ石造りの塔だった。
城にある客室には遠く及ばないが、塔にも一応客室と言うモノがあり、暖炉で服を乾かせてもらった。
ジークさんの槍は彼女が担いでくれた。もちろんジークさんほど楽々とまではいかなかったが、女性であれを担げるなんて凄すぎだ。
?・「自己紹介が遅れちまったねぇ。アタシはエル。六時の守護士、エル・クローバー」
「まさか、女性の守護士様がいたなんて驚きです」
私は毛布で身を包みながら言った。
エ・「アタシは昔っから体を鍛えるのが好きでね。腕っ節なら、そこらの男には負けはしないよ」
凄い。女性で腕っ節って……
エルさんはベッドに腰を掛けていた私の前に来ると、にこやかに手を差し出してきた。私も手を差し出すとギュッと握られた。女性なのに本当に力が強く、ちょっと痺れた。
「でもエルさん、どうしてあの場所へ?」
エ・「ん? アンタが城からいなくなったって連絡が入ってね、国王様にこの場所を探す様に仰せつかったのさ」
「お城……そうだっ、早く帰らないとっ! みんな心配して――」
とんっ
「わっ!」
立ち上がろうとする私の肩をエルさんが軽く押し、私は再びベッドに腰をおろしてしまった。
エ・「城には連絡入れといたから、服が乾くまでゆっくりしておいき」
「す、すみません」
先ほどから迷惑かけ通しでなんだか申し訳なくなる。――――だが。
エ・「クスッ――――なんてね……」
「え?」
エ・「雨ってのは建前だよ」
突然彼女が鼻で笑った。
「建前?」
エルさんがずずいと顔を近づけて私を見る。
エ・「実は個人的にアンタに聞きたい事があるんだよ」
「聞きたい、事?」
なんだろう、エルさんの声のトーンが少し落ちた様な……いや、声だけじゃない。いつの間にか顔つきも変わっている?
「エルさん?」
エ・「聞かせてもらおうか―――――――昨日、あの方の身に一体何が起きたのか……」
「っ……」
私はその目つきに寒気を感じた。


〜つづく〜

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