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四方針守護士〜兵士と王女の物語〜【第三章】

6章 6頁 完結 「テキスト」

時の聖地、クロクラムへとやってきたエマル。
二人目の守護士、ジーク・ライドは自分の長年探してきた男だったが、彼は体の中に化物を宿していた。
大切な恩人が苦しむ中、エマルの取った行動とは……

作者. シロガマ さん


  連載No.000050 登録:2014/03/06 〜 更新:2014/03/10 (0 Res. ,)

第十九話 『帰国宣言』



城へ戻った私は、エルさんとレ二―君にも同行してもらい、国王様のいる謁見の間へ出向いた。

国王・「お帰り、エマル。無事で良かったよぉ。さすがの僕もちょっと焦っちゃった」
王座にちょこんと座りながら、国王様が安心した顔を私に見せる。私は深々と頭を下げた。私の少し後ろでレ二―君とエルさんも片膝を付き、国王様に頭を下げている。
「迷惑をかけてしまって本当に申し訳ありませんでした」
国王・「心配でいてもたってもいられない君の気持も分かるけど、もう一人で出歩いちゃダメだよ? 君は大切なお客様なんだから」
「国王様。実はジークさんの事で御相談があるんです」
国王・「――ジークの事で?」
彼は少し驚きを見せる。国王様は私の真剣な顔を見た後、後ろの二人の顔も順に見た。私達が真剣だと認識した国王様もまた、顔を引き締めた。
国王・「なにやら、重要な話の様だね。――聞かせてもらおうか、エマル」
「ありがとうございます」
私達は再び頭を深々と下げた。

「実は私、国に戻ろうかと思うんです」

国王様に打ち明けた途端、みんなは驚き言葉を失った。もちろん、【この事】はつい今、エルさんとレ二―君にも初めて打ち明けたのだ。
国王・「自分の国に戻る?」
「はい」
エ・「何言ってんだいアンタ!!」
エルさんは国王様の御前という事も忘れ、驚きと怒りにバッと立ち上がった。そして私に歩み寄ろうとしたところを急いでレ二―君が押さえる。
レ・「エル! 落ち着いてください! 彼女には彼女なりの考えがっ――」
エ・「アンタッ!! あれだけジークの事を恩人だ心配だとか言っておいて! 自分一人国に帰るってのはどういう事だい!!? ジークを見捨てるってのか!!」
レ二―君に押さえ込まれながらエルさんが怒鳴る。エルさんらしくて私は苦笑した。
「彼を助けるためには、帰国する必要があるんです」
三人・「っ!?」
「説明の前に国王様……教えてください、ジークさんの容態を」
国王・「っ……」
国王様は珍しく戸惑いの表情を見せた。この表情からして、レ二―君の推測は間違ってはいない様だ。
「ジークさん、本当に元に戻るんですか? 本当の事を教えてください、国王様」
国王・「……」
レ二―君、そして落ち着きを取り戻したエルさんも、国王様の方へと視線を変えた。しばらく口を閉ざしていた国王様だったけど、私達の真剣な眼差しに「降参だ」と言う様に深いため息をついた。
国王・「――回復はしているよ。でも正直なところ、それは一時的なもので何の解決にもなってないんだ」
レ・「それはつまり――」
国王・「確かに、鬼はジークの表情からは徐々に引いてきてはいる。だけど、鬼化の回数を重ねるごとに鬼の封印への抵抗力も上がっている様でね。現に未だ彼の意識は回復していない。すでに彼の成長は止めてあるから、これ以上は手の施しようがないんだ」
「どうなるというんですか?」


国王・「――今度鬼化してしまったら、ジークは二度と元には戻らない……」


三人・「……」
その場が硬直したかのように静かになった。予想してはいたけど、やはり一同のショックは大きかった。
国王・「これはあくまで予想だけど、確率は非常に高い」
「ジークさん……」
まさかとは思っていたけど、ここまで状況が悪化していたなんて……
事の重大さに俯いてしまう私――――――その時……
ゾクッ
エ・「っ!?」
レ・「っ……」
突然守護士の二人が何かに反応し体を震わせた。まるで何かに怯えている様に。だけど私にはほんの少し寒気がしただけで、二人に何が起きているのか分からなかった。
「どうしたんですか二人とも!?」
レ・「こ、この距離だというのにっ、まだこんなっ」
「え?」
エ・「これをっ、あの方が発してるってのかい。冗談じゃない!」
訳も分からず二人は何かに怯え続ける。私は状況が飲み込めず、国王様を見た。
国王・「ジークから発せられる殺気だよ。今は普通の人間には分からないぐらい微弱だけど、彼らには分かるらしい。時おりジークの体から漏れ出してくるんだ」
「っ……」
もう、回復を待っているだけじゃダメなんだ。鬼を彼から遠ざけないと!!

・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・

エ・「ちくしょう……考えが甘かった。まさかここまでだなんてっ!」
しばらく震えていた彼等だったけど、次第に殺気が収まったのか、二人は普段通りに戻った。
レ・「やはりアナタの案を実行するしかないようですね、エマル」
レ二―君の言葉に私は静かに頷く。
国王・「?―― 何の事だい?」
「実は―――」
私は守護士二人に説明した様に国王様にもその方法を話した。

国王・「ジークを鬼から引き剥がす?」

「レ二―君達と相談したんです。レ二―君の魔術でジークさんの中に居る鬼を消し去るには、あまりにも必要な生贄が多すぎて不可能だって。だから今度は彼の体から引き剥がそうと考えたんですが、鬼の抵抗力でジークさんの体が崩壊する危険があると」
国王・「確かに、ジークの体から無理やり引き剥がそうとすれば、鬼も全力で抵抗してくるだろうからね。暴れ出す力にジーク自身、耐えられるかどうか……」
国王様もレ二―君と同じ考えで、顔をしかめる。
「そこで思ったんです。鬼がジ―クさんの体の中に留まり続ける為に抵抗するというなら、【ジークさん本人を】体から引き剥がしてしまえばいいと」
国王・「ジークの方を自分の体から?」
突拍子な意見に国王は目を丸くする。
「彼なら抵抗なく体から引き剥がせると思うんです。鬼も彼の体を自分の物にしたがるはずだから、抵抗せずにジークさんを体の外へ押し出すはず……」
国王・「うーん」
国王様は考える仕草をする。
国王・「で、その後ジークの魂はどうするつもりだい?」
レ・「は、僕が彼と全く同じ肉体を用意いたします。もちろん、右目は取り除かせていただきますが、そちらの方へ……」
国王「なるほどね。レ二―の力なら、ジークと全く同じ体を作り出すことぐらい雑作も無い事だろうからね」
レ・「は、ありがとうございます」
国王・「――問題なのは、ジークを新たな体で再びこの世に誕生させるという事。たとえ同じ姿と言っても、これは【転生】の類に入る儀式。協定を交わした国への大罪行為だと言っていい。――これに関してはどう思っているんだいレ二―? 今度ばかりは子鳥の時のように特別とはいかないよ?」
やはり国王様も分かっていた。鋭くなった視線がレ二―君に向けられる。
レ・「っ……」
国王・「この国が定めた禁術なら今すぐにでも解禁しよう。でもこれは同盟国からの取り決めだからね。僕の一存ではどうにも出来ない」
レ・「――――責任は僕が――」
「レ二―君」
私は彼の言葉を遮った。レ二―君の視線が私に向けられ、私は彼に笑って見せると、ゆっくり一歩前に出た。
「国王様、その件に関しては私に任せていただきたいのです」
国王・「エマル……」
国王様の目が私を見据える。【私】の申し出に迷っている様だった。
国王・「これは同盟国への裏切り行為、そう何度も見逃す事は出来ないんだよ。――たとえ【君】のお願いだとしても」

「私が直接【母】から許可を得てきます」

国王・「エマル!」
エ・「え?」
レ・「誰、ですって?」
私の言葉に後ろの二人が顔を見合わせる。一方国王様は、言っちゃった。と言う様に額を押さえてしまった。
レ・「まさかエマル、貴女の出身国とはもしや……」
私は【ハイ】の代わりニコッと二人に笑ってみせた。その顔に二人は【えっ、えっ?】と、言った様な表情になる。
国王・「……確かに、君が直接母君から許可を得て来てくれるなら、僕としても嬉しい。何の隔たりも無く転生の儀式を行える訳で、ジークを救う事が出来る。でもそう簡単に許可は頂けないよ? 君の国が最も否定して来た行為だからね」
転生は【私の国】と同盟を結ぶ条件としてどの国にも出している最重要禁止事項。無断で行えば、即座に協定は撤回され、今後の人類の危機にまで発展してしまう。
同盟国どの国が欠けてもそれは変わらない。協定は今後の人類の為にも絶対に継続しなければならない。
国王・「それに今君を国に返すというのも危険すぎる」
守・二人「危険?」
「大丈夫です。絶対に母を説得して無事に戻って来ます! ですから国王様……」
国王・「……」
しばらく悩んでいた国王様だったけど、次第に彼は優しくうなづいてくれた。私の言いたい事もお見通しのようで……
国王・「分かっているよ。ジークの魂を体から引き剥がした後(鬼の処理)は、僕に任せてくれて構わない。僕が完璧に時を止めてあげるよ」
「ありがとうございます!」
国王・「いや、お礼を言いたいのは僕の方だよ。危険な事のうえに、大切な僕の部下の事だから、本当なら僕が出向きたいところだけど……今のジークを一人にはできないから……」
「とんでもない。国王様の手を煩わせるなど」
そう言ってもらえると助かるよ。と、国王は苦笑した。
守・二人「……」
先ほどからの私達の会話に、後ろの二人は腑に落ちないという顔をする。
エ・「自分の国なのに危険ってのはどういう事だい? レ二―」
レ・「僕が知るわけないじゃないですか」
国王は後ろでひそひそ話している二人を見た。
これ以上、彼女の正体を彼等に隠し通すのは無理そうだね
国王様は王座から立ち上がり、階段下に居る私の方へぴょ〜んと飛び下りてきた。
「わっ!!」
私は反射的に国王様の小さな体をキャッチする。時間の擬人体だからなのか、この身長だからか、ほんとに軽い。国王様はそのまま私の肩によじ登ると
国王・「二人とも」
手を【これこれ】といった感じで手を振る。
二人・「は」
国王・「本当は、お別れの時までは彼女の正体は秘密にしておきたかったんだけど、しょうがない。改めてエマルの事を紹介するよ」
守・二人「正体?」


国王・「彼女の本当の名は、セリス・エマリエル。輪廻転生を司る国、【流転国】を納める女王の一人娘だよ」


レ・「……」
エ・「……」
突然の事に頭がついて行かないのか、二人は無言で目をパチクリした。だがしばらくして……
エ・「女王(じょうおう)の一人娘と言う事はつまり、王女(おうじょ)様って事、だよねぇ?」
レ・「ええ、そうなります、よね」
二人は顔を見合わせたあと、【えっ!?】と、再びエマルを見て目を丸くした。
国王・「理解出来た? 更に言うなら、近々現女王の後を継ぎ、【次期流転国の新女王】になる子だよ」
レ・「エマルが女王様!?」
エ・「こ、こいつはっ、驚いたねぇ」
レ二―君達が顔を引きつらせる一方、私と国王様は笑顔だったという……

〜つづく〜

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