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四方針守護士〜兵士と王女の物語〜【第五章】

11章 20頁 完結 「テキスト」

レ二―の機転によりエマルは無事に城へと帰還、エマル達を影から逃がすために一人囮となり、瀕死の重傷を負っていたデルタを救出する事に成功。
残るは流転城へおもむき、ジークの転生許可を得る事だけとなった。
だがそんな時、ジークの体に再び異変が起きてしまう!
彼の完全鬼化はもう間近まで迫っていた。

作者. シロガマ さん


  連載No.000054 登録:2014/04/01 〜 更新:2014/05/10 (0 Res. ,)

第三十八話『番外、ジークの過去〜前編』


デルタ・レ二―はナイル軍との合流を果たし拠点までの道を歩いていた。――と言っても、深手を負ったレ二―は歩く事が出来ず、応急処置を受けたが未だ目を覚ます事も無くスコルの背中で気を失っていた。スコルはそんなレ二―を見て小さくため息をついた。
ス・「まだ兵士としては若すぎるというのに、一人でこんな無茶をして……」
ナ・「……」
心配するスコルの傍らで、ナイルは反対側にいるデルタに視線をやった。
デ・「zzz〜〜zzzz〜〜〜」
あれからデルタは泥の様に眠りつづけ、何をしても起きる事はなかった。どうやら心身共に相当疲れていた様で、歩かせるのは不可能だった。――――で
カッポ、カッポ、カッポ……
ナイルの愛馬にうつ伏せに乗せて運んでいるという訳である。何ともマの抜けた姿だ。
ナ・「この前まで瀕死の怪我を負っていた男が品のない顔でよく眠れるものだ」
ナイルは眠り続けるデルタの顔を見て呆れたように言った。今のデルタからは品も、警戒心のかけらも感じられない。彼の周囲を歩いている兵士達は皆デルタに色んな意味で視線を送っていた。
ス・「ふふ、彼が九時の守護士殿ですか。受ける印象は貴方と正反対ですね」
ナ・「ふっ、案外お前とは気が合うかもしれんぞ?」
ス・「貴方が興味を抱いた(いだいた)男……私も是非お話したいものです」
と、スコルはデルタを見ながらクスッと笑った。
ナ・「……」
私とは正反対か……確かに今はこんなだが、戦闘態勢のコイツはまた違った雰囲気を出す。
【アンタは俺の仲間を【一匹】と言った……】
仲間を侮辱された時のヤツはこの顔からは想像も出来ない威圧感を放っていた。
ナ・「――お前をそうまでさせる奴とは一体どんな男なのだろうな」
ス・「ナイル?」
ナ・「何でもない。―――――――拠点まであと少しだ、油断するな!」
ナイルは振り返り周囲の兵に叫んだのだった。

その頃、ナイルが興味を持った【仲間】は今―――

クロクラム城――独房にて
コンコン……
六時の守護士、エル・クローバーは牢獄の扉をノックした。本来牢獄の扉をノックするという話など聞いた事が無いが―――しかしいくら待っても中からの返事はなかった。
エ・「?――入るよ、ジーク」
控えめな声で許可を得たエルは静かに独房の扉を開け、ゆっくりと足を踏み込んだ。明かりと言えば外へ通じる鉄格子付きの小窓。そこから差す日の光のみ。薄暗い独房に繋がれ続けている三時の守護士、ジーク・ライドは―――
ジ・「―――――すぅ」
鎖に繋がれた状態で静かな寝息を立てていた。この姿勢で眠れるとは、慣れとは恐ろしいモノだ。それとも半分気絶状態だろうか?
エルは腰に手を当てて鼻でため息をついた。
エ・「折角面会許可が下りたってのにねぇ。―――しょうがない、出直す―――」
扉の方を振り返ろうとしたエルだったが、何を思ったかふと足を止め、もう一度彼の姿を見た。
エ・「……」
血色の悪い肌。こけた顔、骨の浮き出たアバラ。ほんの数日前の彼とは思えない姿だった。
エ・「……折角来たんだ、少しだけ邪魔するかねぇ」
そう言うと、エルはゆっくりドアの横の壁に腰を下ろした。
エ・「――少しぐらい寝顔見てもいいだろ? ジーク……」
ジ・「―――――すぅ」
普段隙が無く無防備な姿を一切見せないジークは、エルに寝顔を見られているのも気がつかずに静かな寝息を立て続けた。


―――――――そしてこの時、彼は昔の夢をみていた。


・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

「なぁアイツだろ? 人間に化けた怪物って」
ピクッ
廊下をすれ違った兵士達の声。ヒソヒソと喋っているつもりだろうが、彼にはまる聞こえだった。
「いやぁ、一応主体は人間らしいぜ? でもまぁ、そんなの関係ないだろ。結局は【化物】に変わりはないんだ」
ジ・「……」

――――――――――――化け物

クロクラム国に仕えて結構な時が経ったが、当時の俺はやはり誰とも打ち解ける事が出来ずにいた。【あの姿】を見た城の衛兵達も街の住民もまた、俺を受け入れる事は出来なかった。――俺の顔を見ればすぐさま声を潜めて噂をする。そして目が合えば、一目散に背を向け逃げて行く。この国で働き出してからそれが俺にとって当たり前の事だった。初めは命を狙われないだけマシと思っていたが、やはりつらいな…………
――それは街を巡回しても同じ事だった。俺が通る前にはいつも誰もいない。――ついには
歴代三時・「城下町の住民達から、お前は巡回に来ないでくれと申し出があった。お前には城の巡回にあたってもらう」
ジ・「―――了解しました」
……こんな時、いつも国王に言われた言葉を思い出す。

【君の強さと優しさはいつかきっと私の大きな力になる】

―――本当にそんな日が来るのか? ――――――――俺にはわからない。

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ジ・「自分がですか?」
ある日、俺にある作戦に参加しろと命令が下された。
歴代三時・「ああ、お前の戦闘力なら出来るかもしれん。難しい任務だが、頼めるか?」
ジ・「了解しました」
これがキッカケで俺にも仲間が出来るかもしれない。その時の俺は柄にも無く喜んだモノだ。
――だが、その喜びもほんのつかの間のものだとすぐに思い知らされた。俺に下された任務。それは……

―――――【囮】――――――

一人で敵の軍勢を引きつけ、気を取られているその隙に敵を狙い撃つというもの。常に命の危険と隣り合わせ。この役わりで亡くなっている者は少なくない。上はその役目に俺を強く推した。――俺の存在を否定していたのは、兵士達だけではなかったという事だ。だが皮肉にも、幼いころから命を狙われ続けて来た経験が役に立ち、訓練や任務などの失敗は皆無。どんな過酷な任務でも生き延びてきた。おかげで俺はどんどん昇格して行ったが―――
―――任務から帰った俺を迎える皆の顔は、俺の望んでいたモノではなかった。皆のその顔を見せられる度、心をへし折られる気分だった。
ジ・(何故俺に向けられる顔はいつも――――――いつもっ……)
仲間という存在に俺の名を呼んでもらう事。当時の俺にはそんな至極簡単な事がかなり欲張りな願いだと改めて実感させられた。

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国王・「会合場所まで、護衛を引き受けてくれないかな?」
ジ・「……護衛?」
国王の前に膝をついていた俺は顔を上げた。
歴代十ニ・「か、彼一人を護衛にあたらせるのですか!? 危険すぎますわ!!」
周囲にいた先代守護士達にどよめきが走る中、国王だけは笑顔だった。
国王・「意見は変えない。私の護衛は君だジーク。嫌かい?」
ジ・「……異存は、ありません」
何故自分なのか俺には分からなかった。かなり問題視されたが、国王は断固として意見を変えようとはせず、言われるがまま俺が護衛役という事で異世界の会合場所へとついて行く事となった―――――のだが。
国王・「じゃあ、私は先に会場へ行っているよ。君は会合終了時間に迎えに来てくれればいいからね」
国に到着しての第一声だった。
ジ・「了解しま――――――は?」
危ない。危うく返事をするところだった。
国王・「だから、君は会合終了時間まで自由にしていていい。いつも頑張ってくれているからね。御褒美に自由時間を上げちゃう♪」
ジ・「自由?」
普段から結構砕けた態度を取る方ではあったが……
ジ・「お気づかいは無用です。会合場所まで護衛するのが自分の仕――」
国王・「命令だよ」
ジ・「っ……」 
不意に国王口調はさすがに驚く。――結局、俺はそのままその場に置き去りとなった訳だ。

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初めての土地で詳しい訳も無く、俺は中央広場で数時間人間観察をして時を過ごした。それぐらいしかする事も思いつかなかったからな。
ジ・「……」
周りの連中は皆、誰もかれも楽しそうな顔をして俺の前を通り過ぎて行く。
ジ・「……楽しそうだな」
――――――それに比べて、俺は……
城に居ても、街に出ようと俺に向けられるのは白い目だけで、こうして外の国へ出ても自分一人人間観察で他人を羨むだけ。もう自分からは他人に心を開けそうにない……不安で、他人の視線が恐ろしくて、正直疲れ果てていた。もうこの任務で【終わり】にしよう―――――そう、思うほどに。

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ジ・「国王はこっちに歩いて行ったはずだが……」
ようやく時間がきて会合場所を探し始めたが、国王は肝心の会合場所を俺に知らせずに行ってしまった。何が目的だったのかさっぱり掴めん。―――後で知った事なのだが、実はこの時、国王は俺に場所を探られない様にとワザと反対の方向へ歩き、遠回りをしたらしい。本人からそれを聞かされた時はさすがの俺でも目を丸くした(汗
――しばらく会合場所を探し歩き続け、次第に民家が集まる路地へと入ってしまった。どう考えても会場がここにある訳が無い。気乗りせんが、もう誰かに聞くしかないだろう――――――と言ってもこの辺に人は……
周りを見渡し、振り返ると……
ジ・「おお」
いた―――――道の端で膝を抱えていた一人の【少女】……
相手も俺に気付いてこちらを見ている。他に人は見当たらない。ダメ元だがあの子供に聞いてみるしかないだろう。こんな大男が近づいたら泣いて逃げてしまうかもしれんが大丈夫だろうか? 俺は少し緊張気味に子供へと歩み寄った。――意外な事に子供は俺が近づいて行っても表情を変える事は無かった。元々ムスッとして上目使いではあったが、まっすぐ俺の目を見て来た。大抵の奴はこの身長差にたじろぐが、こんな子供は初めてだった。

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【あっち方向にまっすぐ。行けばわかる】――――か。
俺は額を抑えた。なら……俺の目の前に広がっているこの広大な【海】はなんだ?
ジ・「―――なに?」
急を要した俺は急いで通行人を見つけ会合場所を聞いた。だが二度目の会合場所を聞いて俺は更に驚いた。会場は俺が来た方向とは全くの【正反対】だったからだ。
ジ・「やられた!」
その後、国王の元にたどり着いたのは会合終了からおよそ二時間後の事だった。そしてこれが、俺の最初の任務失敗となったわけだ。
――だが、何故か俺はその子供に怒りを感じる事はなかった。あったのは初めて俺とまともに言葉を交わしたという驚きと、あの子共への興味だった。
国王・「次回も護衛頼めるかな?」
ジ・「は?」
俺は自分の前を歩く国王の背中を見た。
国王・「――嫌かい?」
ジ・「ですが、俺っ―――自分は、任務にもかかわらず国王である貴方を二時間も……」
国王・「うんうん。私【時】を忘れる程、有意義な自由時間だったって事だね」
普通なら何らかの処罰があってもおかしくはない大失態だが、国王は怒るどころか満足そうに笑った。
ジ・「有、意義――――――――はは、確かに……」
国王・「よろしい。――で、引き受けてくれるのかな?」
ジ・「は、国王の命令とあらば、喜んで……」

・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・

エ・「ん?」
ジ・「……」
気のせいだろうか、ジークの顔がさっきよりも穏やかに見える。――いや、笑っているのか?
起きている訳でもないが、ほんの微かだがその顔は明らかにほほ笑んでいた。
エ・「こんな状況で笑うなんて、よっぽど良い夢でも見てるのかねぇ……」
普段は気を張っていて険しい程だ。エルはこんな穏やかなジークの顔を初めて見た。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

正直、あの子供にまた会えるとは考えてはいなかった。もしかしたらまたこの前の様な予想外な事が起きるかもしれない。そう思って再びこの地へ来た。―――だが、予想外な事に【予想外】はすぐに起きた。
ジ・「――何をしているんだ? アイツは……」
再び自由時間を貰い、街並みを歩いていると、歩道の木によじ登る【あの子供】が目に入った。まさかこんなにあっさり再会するとは思っても――――ん?
見ると、登っている木の先にはあの子供の物であろうハンカチが引っ掛かっている。なるほど。ここは手を貸した方が――――いや、あそこまで自分の力で登ったのだから最後まで……
しばらく悩んでいた俺だったが――
ヒュウ――――結果を出す前に微かな風がハンカチを舞い上げてしまった。
「あっ!」
ズルッ!!
っ!?―――少女はハンカチに気を取られ手を滑らせた。俺はとっさに、少女の元へと駈け出したのだった。

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その後、俺は嫌がる子供を無理やり連れて中央噴水広場へとやって来た。もちろん理由はある。木から落ちる以前に子供は膝をすり剥いていたからな。もちろん手当てする為にだ。あのハンカチはその為に必要だったのだろう。
キュッ―――少女のハンカチで擦りむいたひざを縛った。
ジ・「まったく。女の子なんだ、無理はするな」
「……ありがと」
初めは俺を警戒していたこの子供も、次第にちゃんと話してくれる様になった。この子がある国の王女だと言う事も、どうして俺にあの様な嘘をついたのかも、その時知る事が出来た。
「あんな会議なんて、無くなればいいんだ――――そうすれば、お母さんだってもっと……」
ジ・「……」
俺にあんな嘘の場所を教えたのも、自分を放って会合に出ている母と、自分から母親を奪って行く会合その物が嫌いだったから。その会合場所を聞いた俺にも同じ憎しみを感じたからだった。――コイツも寂しかったんだな。泣くまいと涙をこらえる姿がいじらしい。――初めからどこか雰囲気が俺に似ているとは思っていた。他人に心が開けないトコロ……心のどこかで助けを求めている様な寂しげな目。女王と娘では共に過ごせる時間など限られている。小さい子供に母親の愛情は必須だ。だが母君の事全てを責める事はできない。国を統べる女王なりに民の為に尽くしている訳だからな。
ジ・「……」
ポフッ
少しためらいながら、俺は少女の小さな頭を撫でてみた。

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ジ・「そろそろ会合終了の時間だ。会議館へ戻らんとな」
「おじさん、今度は迷わなかったんだね?」
ジ・「ははっ、そんなに何度も迷ってたまるか」
「えへへっ」
その時の俺は自然に笑っていた。少女もすっかり俺への警戒心を解いて笑いかけている。それだけでも、今まで迫害され続けてきた俺の心を癒すには十分だった。
――だが俺にとっての最も【予想外】だったのは……
「えいっ」
ジ・「?」
少女はスタッとベンチから飛び下りると、少しためらいながら俺に歩み寄って来た。そして……
――ギュッ
ジ・「!?」
「一緒に行こう? 会合仕館……」
ジ・「っ……」

―――少女の手が俺のマントを掴んだんだ。自分から、この俺のマントを……

【君の存在が、この国の人にとっての一番の恐怖だと気がつかないのかい?】

【アンタを受け入れるヤツなんて誰もいやしないよ。その目でこっちを見ないでちょうだい! 気持ち悪い!】

【人の皮をかぶった化け物が! そのうち人を襲う様になるんだ。とっとと消えちまえ!!】

【アイツだろ、人間に化けた怪物って】

【化物に変わりはないんだ】

【国王様も、どうしてあんなのを城へ置いているのか】

「ダメ?」 
俺を見上げる少女の顔は、なんとも不安そうだった。
ジ・「……」
―――ぐっ
「う?」
ジークは少女の後ろ襟首へと手を伸ばし、ゆっくりとその軽い体を持ち上げ自分の首元へと座らせた。
「わぁ……あははっ、たかぁい!」
絶景を楽しんでいるかのように少女はしゃいでいた。
ジ・「っ……」
俺を相手に笑っている人間がいる……



――――――――――――――――――――――――嬉しかった。



その時の俺は、一体どんな顔をしていたのだろうか。――いや、分かっている。自分が今どんな顔をしているかなど。だから俺は肩車をした。さすがに大の男がこんな顔、見せられるはずもなかった。
そんな俺に気付く事も無く、少女はずっと景色に夢中だった。


〜つづく〜

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