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四方針守護士〜兵士と王女の物語〜【第六章】

15章 24頁 完結 「テキスト」

ジークを鬼の呪縛から救いだしたセリス。
ようやくクロクラムに平和な日常が帰ってきた。
ある日、熱を出したジークのお見舞いに三時の塔を訪れるセリス。
小さなトラブルから、互いの気持ちに気付き始める二人だが、二人には大きな壁があった。
王女と兵士では、決して結ばれる事は無いのだ……

作者. シロガマ さん


  連載No.000055 登録:2014/04/20 〜 更新:2014/05/10 (0 Res. ,)

第四十八話『お見舞いトラブル』


私とジークさんは【友達】と言う間柄。仲が良い子供とおじさん、それだけの関係。
――だけど、その関係すらもうすぐ【終わり】を迎えようとしているなんて、今の私は想像もしていなかった。

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「〜〜♪〜♪〜〜〜♪〜〜」
色々あったけど、十ニ時兵の力は凄い。あの事件から数日が経ち、今では殆どの人が元通りの生活を送っている。エルさんの怪我もすっかり完治し、今では普通に兵士達をしごいている。療養中はよほど退屈だったのか、ベッドに寝かされている間はイライラしっぱなしだった。今のエルさんはまるで水を得た魚みたい。レ二―君も程良く療養して力の方も回復したようだ。今では彼も普通に仕事や調べ物等をこなしている。そしてデルタさん。鬼から負った肩と腕の傷で長い事包帯で固定していたけど、先日ようやく腕の治療を受けられたそうで、彼も今では何事も無く剣を振るっているらしい。何でも今は、ナンパを控えて太刀稽古に夢中との事。城のみんなもあの時の事は殆ど覚えていないみたい。
――そして私は今、一人三時の塔の門前を歩いていた。
「こんにちは! ジークさんのお見舞いに来ました!」
いつの間にか馴染んでしまったこの挨拶で、三時の門を張る兵士さん達に話しかけた。
ジークさんも衰弱しきった体をレ二―君達の治癒で治してもらい、やせ細った体はすっかり元に戻っていた。けどやっぱり精神的に参っていたのか、その後彼は数日間熱をだして寝込んでしまっていた。
新米・「これはエマル様。度々おいでいただき感謝であります!」
あ、この人いつも語尾に「であります!」を付ける新米兵さんだ。ふふ、こんな時でもビシッと敬礼して……そんなかしこまらなくていいのに。
「こんにちは。ジークさんの具合はどうですか?」
新米・「もう殆ど完治状態であります。念のためもう少し休養を取ってもらうでありますが、本人はベッドで書類を拝見しているであります」
「書類? もう、ジークさんてば、それじゃあ休養になってないじゃない」
と、私は苦笑しながら開いた門をくぐろうとした。と、その時。
新米・「あ、ちょっと待ってくださいであります」
「?」
新米さんが私を引きとめ、再び私の方へと歩み寄って来る。
新米・「じつは今日、ジーク様が憑き物から解放されたお祝いに、我等三時兵で宴を開く予定であります」
「宴……パーティー?」
新米・「そうであります! これは三時兵だけと決めた宴でありますが、何うえ男だけのむさ苦しいモノであります。自分の一存ではありますが、是非貴女に参加していただきたいでありますよ」
「え? 私も参加していいんですか?」
新米・「もちろんであります。先ほども言った通り、男共だけですので料理もまともなのを出せませんが、飲んで騒いで歌うだけでも楽しいでありますよ? その上貴女が来てくだされば、まさに戦場に咲く一輪の花であります! きっとジーク様もお喜びになるに違いないであります!」
「わぁっ♪」
普通の人なら、むさ苦しいと言うだけで興味をそがれるものだが、これでもエマルは貴族で王女。堅苦しいパーティーしか知らない彼女にとっては、気軽で騒ぎたてる様なパーティーに深々と興味が湧いた。
「ありがとうございます! ぜひ私も参加したいです!」
ニッコリ笑うエマルに新米兵も嬉しそうに笑う。
新米・「そうでありますか! よかったであります。これで更に楽しさ倍増でありますよ♪」
(ふふっ、お祝いに何か贈った方が良いのかな? ジークさんは何が好きなんだろう?)
などと今からワクワクしてしまう。と、ここで……
ヒュウゥゥ……
さわやかな風が二人の間を吹き抜ける。本当にそよ風程度だったのだが、エマルは肌寒さを感じ、無意識に両腕を摩った。
新米・「あ、もちろんこの事は本人には内緒でありますよ? あくまでも、サプライズでありますゆえ」
と、新米さんは口元に人差し指を立てたのだった。

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「こんにちは」
私がジークさんの私室を訪れると、新米さんが言った通り、彼はベッドに座って資料とにらめっこしていた。私に気がつくと
ジ・「おう、来たか」 
と、書類から私へと視線を移す。
ワイシャツ姿で腕まくりと言ったラフなカッコ、ベッドに入る時まで軍服姿とは行かないからね。私は彼に歩み寄ると、「熱は――」 と、彼の額に手を当てた。いつの間にかここに来たらまずやる行動になっていた。ジークさんも最初は遠慮がちだったけど、今ではすんなり当てさせてくれる。―――けどもうその必要もなさそうだわ。
「うん、熱はすっかり下がった様ですね。よかった」
ジ・「おかげさまでな。――とは言え、結構長引いてしまったな」
ちなみに説明すると、いくら十ニ時兵が治癒能力を使えると言っても、軽い怪我や熱程度ではその能力を使わない。あくまでも瀕死の重傷を負っている者だけ、もしくは緊急事態の時だけである。
ジ・「ん?」
ジークさんは私の顔を見て不思議そうな顔をする。
ジ・「何かあったのか?」
「え?」
ジ・「いや、なんだか上機嫌みたいだからな」
ギクッ―――顔には出て無いはずなのに、なぜ気がついたのだろう!?
「そ、そんな事より、折角頂いたお休み何ですから、大人しく寝てくださいよ」
ジ・「ん? いやしかし、溜まりに溜まった資料に目を通さんと。お前もたった今熱が引いたと言っただろ?」
う、しまった。
「そ、それでも! 病み上がりの体に鞭打ちすぎです! また熱が上がったらどうするんですか? さぁ寝て寝て!」
折角のパーティーがあるんだし、疲れられては私も兵士達も困る。私が強引にジークさんの体を押すと、ジークさんも諦めてくれた様で「やれやれ」と苦笑した。
ジ・「分かったよ。では、お節介な誰かさんに従う事にしようか」
彼は見ていた書類をベッド脇の棚に戻した。すると何かを思い出したかのように――
ジ・「すまん。休む前に俺の机にある眼帯を取ってくれないか?」
「眼帯、ですか?」
彼の机の上を覗いてみると、数枚の書類の下に埋もれているのを見つけた。ジークさん愛用の黒い眼帯。
そう言えば、寝込んでいた時のジークさんはずっと眼帯を外していたっけ。右目から義眼が覗いている。どうりで違和感を感じる訳だわ。もう私の中では彼には眼帯が当たり前になっていたから……
私は眼帯を手に取ると、試しに自分の目にかざしてみた。
「えへへ、似合いますか?」
ジ・「ん?」
私の言葉にジークさんは眉を歪める。
ジ・「馬鹿言え、似合っていると言ってほしいのか?」 
「はい、もちろんいやです」
私は笑顔で答えた。
ジ・「おいおい、ハイと言ったらどうしようかと思ったぞ」
「えへへっ」
ジークさんは昔から少しも変わらない。なんかいいなぁ、久しぶりのこの感じ。
ジ・「義眼を埋めたからもう必要ないとも思ったんだがな……やはりどうにもそれが無いと落ち着かん。最初は邪魔で仕方が無かったが、慣れとは恐ろしいモノだな」
「ふふ、今やチャームポイントですよね、ジークさんの眼帯って」
ジ・「チャームポイント? やめてくれこんなおっさんに」
彼は苦笑しながら眼帯を受け取った。本人には自覚が無いだろうけど、これほど眼帯に違和感を感じさせない人も珍しいかもしれない。
「あ、そうだジークさん、ちょっと目を閉じてもらってもいいですか?」
ジ・「?―――別に構わんが……」
そう言うと彼は不思議そうに両目を閉じる。私はベッドに膝をつき、彼の目の前に屈みこむと、義眼の方の瞼をそっと上下に開いた。
ジ・「な、なんだ?」
ささっ―――今度はこじ開けた目の前で手を左右に振ってみる。
ジ・「?」
「やっぱり見えてないんだ……」
ジ・「? もしかして、それが知りたかったのか?」
「私義眼って初めてで、凄いリアルな作りだったからもしかして見えているのかな……とか」
「そんなわけないだろう。義眼とは外見を良くするほか、瞼の形を整える為に用いられる物だ。本物と同じ働きはない」
「よく出来てるのに―――痛くはないですか?」 
私は更に義眼へ顔を近づけた。
ジ・「問題無い。少し違和感はあるが、それもじきに慣れ――」

コンコン

「え?」
ジ・「ん?」
突然のヘアのノックに私は指を離してしまった。
新米・「失礼するであります。コーヒーをお持ち――――」
……普通なら、「失礼します」と聞いて相手が「どうぞ」と言ってからドアを開けるものだ。だがやって来た相手がまだ【新米】となると、色々抜けたところも―――
新米・「あ――」 
新米さんは私達を見た途端、ドアノブを持ったままピタリと動きを止めてしまった。
[?]
ジ・「?」
何故新米さんは目をパチクリしているのか。最初は理解出来なかったけど、私達はお互いを見てようやく理解した。
【想像してみてください。女性が男性の目の前に手をつき、その男性の顔を覗き込んでいる光景を。――しかもその時、相手が目を閉じていたとすれば……第三者から見て考えられる展開は一つ!】
二人・「……っ////」
次第に二人の顔が赤く染まって行く。
新米・「あぁ〜!」
二人・「!?」
私達はビクッとした。あぁ〜って、ああって何!!?
新米・「お二人はそういう関係だったでありますか! これは気も利かずに――」
と、新米さんはペチと頭を叩く。や、やっぱり誤解してるぅ!!
「違いますよ!! これは――……」
新米・「しかもエマル様からとは、意外に大胆でありますなぁ♪」
「で、ですから今のはっ////」
ジ・「……」 
エマルが懸命に誤解を解こうとする一方、ジークは【あちゃ〜】と言った顔で額に手を当てていた。こうなっては何を言っても無駄な事を彼は知っているのだ。予想通り新米は・・・
新米・「いやいや、何も言わなくていいでありますよ。邪魔者は撤退するであります」
「ちょっ、新米さん!?」
呼び止めようと手を伸ばすが、新米さんはそれはもうニコニコしながら後退し――

パタン

「あ――」
ゆっくりとドアを閉めたのだった。
――誤解を受けたまま取り残された二人。私は手を伸ばしたまましばらく放心状態だった。
ジ・「おい、いつまで固まっているつもりだ?」
と言う、彼の一言でハッと我に返った。バッとジークさんの方へ振り向き
「ど、どうしてこうなっちゃうんですかジークさん!!」 
私は振り返り早々ジークさんにあたった。不用心だった私達が悪いのか、「どうぞ」を待たなかった新米さんが悪いのか、タイミングが悪いのか!
ジ・「……俺にそれを言うのか」 と、彼は呆れ顔。
「どうするんですか!? 向こうからはまるで私達がキ――……っ/////」
言おうとした途端、顔が熱くなるのをはっきりと感じてしまった。そんな私の顔を見たジークさんも
ジ・「な、なんて顔をしている///」
「そっ、そう言うジークさんだって!!!////」
私はもう半ばパニック状態で急いで身を起こす。
ジ・「……」
「っ……」
・・・・・
・・・・・
・・・・・うぅっ
見事なまでに間が持たなくなった二人。今時こんなウブな人も珍しいかもしれない。
「と……とにかく! 大人しく寝てください!」
静寂の苦し紛れにまたその話題に戻ってしまった私。
「私帰りますから! お、おお、おとなしくしててくださいね!?」
ベッドから降りると、アタフタしながらドアの方へと後ず去りした。どうしよう、思いっきり態度に出ちゃってるよう/////
ジ・「おう、気をつけて帰るんだぞ?」
と言っても、歩いて城まで帰る訳ではない。徒歩で城まで帰ると、半日以上かかってしまう距離である。塔の地下にはそれぞれ城へ続く転送陣が存在し、それを通って塔の門前へと送られるシステム。もちろんその事はジークだって知っている。相当動揺している証拠だろう。
「じゃ、また!」
せかせかとドアノブに手を掛けようとした時――
ガチャッ
「え!?」
再びドアが勝手に開いた。
兵・「?―― これはエマル様、もうお帰りになってしまわれるのですか?」
ドアが開くと、そこには先ほどと違う部下が書類を持って立っていた。
兵・「これはすみません、ノックしたのですが、聞こえておられなかった様ですので。ジーク様が拝見なされると仰っていた次の任務についての資料を――――――?」
兵は二人を見て目をぱちぱちした。
ジ・「どうした? 早く資料を見せてくれ」
兵・「は、はぁ――――――しかしぃ……」
と、言いながら兵士はエマル、ジークと、二人を交互に見た。
「どうしたんですか?」
兵・「ジーク様、熱が上がってしまわれたのではないですか? 目に見えて真っ赤ですが?」
ジ・「はぁっ!?/////」
兵・「それにエマル様も同じぐらいお顔が……」
「えっ!?/////」
悪意のない追い打ち。二人は顔を合わせるとハッとして、再び兵士の方へと――
ジ・「そんな事は無い!」
「違います!」
と、同時に叫んだのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ううっ、どうしてこんな事に。新米さん皆に言いふらしていたらどうしよう〜……」
エマルは三時の塔から城へと戻り、自分の客室へと戻るところだった。
「大体、あの新米さんが――――――ぅっ」
再び肌寒さを感じ、腕をさする。
何だろう、最近やたらと寒いなぁ。心なしか体もだるいし……もしかしてジークさんの熱が移ってしまったんじゃ? いいえ、風邪なら分かるけど、熱は出るモノで移るモノじゃない。考え過ぎ、考え過ぎ。――じゃなかったらお見舞い続きで疲れが出ただけだよ。それに夜にはパーティーがあるんだし絶対に行きたい。これくらいなら全然平気。これからしばらくヘアで休めばパーティーの間ぐらい。
自分のヘアの前に辿り着き、私はドアノブに手を伸ばした。
「あっ」
だがその手はノブを握る前にピタッととまってしまった。
「休んでいる場合じゃないわ。ジークさんへのお祝いプレゼントを買いに行かなきゃ。――何が良いかなぁ」
誰かに送るプレゼントを選ぶのは楽しいモノだ。相手の喜ぶ姿を想像するとなおの事気合いも入るというモノ。
「うーん……」

・・・・・
・・・・・
・・・・・

「う……」
だが、数分たった後もエマルには何も考えつかなかった。――だがそれは至極当然のことだった。
「よく考えれば私、ジークさんの事何も知らないんだ……」
彼が何に興味があるのか、何をあげれば喜ばれるのか、エマルは全く知らなかったのだ。何度も入った私室ですら、彼についての情報源とも言える物は何一つおいて無かった。
「花束?――普通すぎる。じゃあ服とか靴……それとも食べ物、ワインとか?」
だめ、全部彼のイメージじゃない。
「っ……」
考えれば考えるほど、自分が彼について何も知らないという事を実感させられる。そして同時に寂しさを覚えた。
≪お前が俺にとって、どれだけ特別な存在か……≫
あの時、精神と意識の最果てで彼はそう言った。ジークさんにとって私は特別。特別なのに何も知らない私。――それにその【特別】と言うのはあくまでも【友達】として。彼にはあの頃のまま、私が幼い少女にしか思えていない。よく笑われる、やっぱり子供だなって……

「ジークさんにとって私は―――――特別な友達……」

私は無意識に呟いていた。なら彼は一体誰が好きなのだろう? 城で働く給仕さんとか、街の誰かとか、もしかしてエルさんとか?
想像してみた。彼が誰か他の女性と楽しそうに会話している光景を。
「―――――――はっ!?」
想像を打ち消そうとエマルは激しく頭を振る。
「今はプレゼントのはずじゃない! 時間もあまりないんだから、とりあえず今はプレゼントに専念しよう! 街に行かなくちゃ!」
そう言うと、エマルはつい今歩いて来た廊下を急いで引き返して行ったのだった。
――ジークが誰かほかの女性と楽しそうにしている。その姿を想像した時、彼女は胸を締め付けられた。自分の感情に気づき始めているエマル。二人の距離は確実に縮んでいた。

〜つづく〜

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