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四方針守護士〜兵士と王女の物語〜【最終章】

18章 34頁 完結 「テキスト」

――俺の妻になって欲しい――
長い葛藤の末、セリスとジークは夫婦となった。
すぐに離れ離れになる運命だが、今はこの事実さえあれば良い。
彼女が役目を果たすまで、いつまでも待ち続けるから……

四方針守護士〜兵士と王女の物語〜ついに完結!

作者. シロガマ さん


  連載No.000066 登録:2014/05/15 〜 更新:2014/06/06 (6 Res. 2014/06/10,)

第六十一話 『訪問者』


それはまだクロクラム国に日が射す前の事……

パリッパリパリッ――――――シュンッ!
次元に小さな穴が開き、二つの人影がクロクラムの地、高い丘へと降り立った。
?・「……」
人影は用心深く辺りを見回し、この辺りが安全な事を理解すると、この高い丘から国を見下ろした。
?・「ほう、ここがクロクラム国か」
眼つきの鋭い彼は周りを見回しながら眼鏡をクイッと持ち上げた。丁度夜明け時刻で、山の向こうから日が徐々に顔を出し、ゆっくりと街や海、国全体を照らしていくところ。何とも美しい光景である。
??・「おぉ、これはいい時間に来ましたね。この様な美しい光景は滅多にお目にかかれませんよ」
と、温厚そうな笑みで自分の横に並んでくるもう一人の彼。
??・「城の周りに彼等の統べる四方の塔。……間違いありません、話しに聞いた通りです。いかがなされますか? このままクロクラム城へ……それとも今日一日は城下町で宿でもとりましょうか?」
?・「何にせよ、まずはクロクラム王に挨拶が先だ。―――いくぞ」
??・「は」
二つの人影は城へ向い、足早に丘を下って行った。

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チュンチュンッ
「ん……」
鳥のさえずりが聞こえ、セリスは丸めていた体をモゾモゾと動かした。ゆっくりと瞳を開けると……
(?……ぁ、れ?)
おかしい。目を開けているはずなのに目の前はまだ真っ暗なまま。まだ夜なのかな? でも遠くで子鳥の声が聞こえるけど……それに、なんだかとても温かい。
セリスは顔を上へと向けてみた。
(あ……) 
真っ暗な謎はすぐに解けた。
ジ・「すぅ……」
彼の寝顔がすぐそこにあった。私達は向かい合い、身を寄せ合って眠っていたのだ。
「……」
セリスはジークを起こさない様にゆっくりと体を起こし、彼を見降ろした。彼はグッスリととても気持ちよさそうに寝ている。すこし動いた程度では全く反応しなかった。そっと自分に掛かっていた彼の軍服を彼の方へと移動する。
「……ふふっ」
こんな何気ない事がセリスは嬉しかった。普段一切の隙を見せない彼が私の前で気持ちよさそうに寝息を立てている。その表情はいつもの厳しいモノとは全く違い、少し幼気に見えた。誰も見られないであろう彼の寝顔をこんなに間近で見られて、しかもそんな彼に肌掛けをする事が出来るなんて誰にでも出来る事じゃない。それがたまらなく嬉しかった。

【俺の妻になってほしい】

自然と昨日の言葉を思い出してしまい、それだけで顔が熱くなった。なんだか夢を見ているかの様。そう思っては目の前の彼の姿を見て再び幸せに浸る自分がおかしい。
……だがいつまでも彼の寝姿を見ている訳にもいかない。セリスは着崩れた衣服を綺麗に着直し。音を立てない様に洞穴の出口へと向かった。
「わぁ、眩しい。……う〜〜〜〜〜〜〜」
清々しい朝に大きく伸びをする。外はすっかり明るくなり、昨日までの霧もきれいさっぱりと晴れていた。森は以前の様に木漏れ日が差し込み、美しく神秘的な輝きを放つ。鳥達の綺麗なさえずりが聞こえて来た。
「〜〜〜〜んっ。……さてと」

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

「――あっ」
数十分後、セリスが洞穴まで戻って来るとジークも起床し服装を整えていた。昨日の今日だからか、なんだか声をかけるのも少し緊張してしまう。
声、かけなきゃ……自然に、笑顔で……
「ジッ…… 〜〜〜〜っ////」
そうは思ってもいざ声を掛けようとすると一気に心拍音が上がってしまう。バカバカッ! 意識しすぎだよぉ!
声をかけようとしては言葉を詰まらせ、数回その繰り返しだった。一人で何をやっているのやら。そしてようやく決心がついたモノの、そんな長々とジークが気配に気づかない訳も無く……
ジ・「さっきからそんな所で何をしているんだ?」
「っ!?」
彼の声にビクッとして振り返った。気がつけば彼の着直しは完全に終わっており、私の方へと振り返っていた。
「おっ、おはようございます!!」
いけないっ、声、上ずっちゃった!!
ジ・「おう、おはよう」
……あれ?
意外な事に彼の態度は普段通りだった。その自然な笑顔にセリスの緊張もなんとなく解けていく気がした。
「あはっ、おはようございます!」
ジ・「今までどこへ行っていたんだ? 目が覚めたら姿が見えんし、探しに行こうかと思っていたところだ」
「えへへっ」
ジ・「ん?」
笑顔でジークに歩み寄るセリス。腕を後ろに回しているところを見ると何かを持っている様だ。そして彼の目の前で立ち止まると……
「はい♪」
ジ・「?」
笑顔でセリスが差し出して来たのは、林檎サイズの黄色い艶のある果物だった。
ジ・「……これを、探して来てくれたのか?」
「えへへっ、頑張って見つけてきました。残念ながら一つしか採れませんでしたけど」
ジ・「いや、これだけでも探すのに苦労しただろう? ……無理しなくてよかったんだぞ?」
「いえ! そんな事ないです!」
だって――…

――離れ離れになる前に、一度くらい【妻】らしい事をしておきたかったから――

大切な人に朝ご飯を作る。今回の場合は自分で作れさえしなかったけど、彼を喜ばせようと頑張って探して来た朝ご飯だった。
ジ・「……」
彼女の気持ちが通じたのか、ジークは嬉しそうに果実を受け取り、それを見つめていた。
ジ・「……ありがとう、な」
「えへへっ」
ジークはその果物を上下挟むように掴むと、器用に縦半分に割り、半分をセリスに差し出した。
「いいんですか?」
ジ・「当然だ。お前の前で俺だけ食えん。それにお前、結構腹減っているんじゃないのか?」
「え?」
何故分かったのだろう? 確かに昨日から何も食べていないし、お腹は空いているけど……
ジ・「ははっ、やっぱりか。寝ている時に腹の虫が鳴いていたぞ?」
「えっ!?」
ジ・「それも結構凄い音でな」
「ええっ!?」 
セリスは急いでお腹を押さえた。き、気づかなかった! 私そんなに凄い音をさせていたの!? 寝言だけではなくお腹の音まで聞かれてしまうなんて!
「うぅっ/////」
ジ・「くっ、はっはっはっ!!」
顔を赤らめるセリスを見てジークは豪快に笑いだす。
ジ・「嘘だ嘘。腹の音を聞かれるのがそんなに嫌か?」
「えっ!?」
―――もしかして、やられた?
「うぅ〜〜〜〜っ! もうっ! ジークさん!」
笑い続けるジークの腕をセリスは真っ赤になりながらポカッと叩いた。
ジ・「おっ? 俺はこれでも怪我人なんだぞ?」
「十分元気そうじゃないですかっ!」
ジ・「おいおい、これでも結構――…」
――なんだかんだ言って、この何気ないやり取りが二人には楽しくてしょうがないのだ。
?・「楽しそうですね、お二人共」
「え?」
ジ・「お、来たな?」
背後からの声に私達は同時に入り口を見た。気がつかなかった。いつの間にかレ二―君が入り口付近に立っていたのだ。彼は「失礼しますよ」と一言断ると、ゆっくり中へと入って来た。
「レ二―君!」
レ・「国王の命令でアナタ達を迎えに来ました。お二人共元気そうで安心しましたよ。何やら我々が不在中に大変な事になっていたみたいじゃないですか、ジークさん?」
ジ・「……お、おう」
もちろんこれはレ二―の演技。レ二―は陰でセリスを見張っていた事を明かそうとはせず、あくまで無関係を装った。レ二―の呆れた目がセリスに向けられる。
レ・「しかし貴女の行動力には恐れ入りましたよ、エマル。たった一人で霧の漂う危険な森へ踏み込むなんて。命知らずと言うかなんと言うか……」
「えへへ、そんな」
レ・「照れられては困ります」
「……はい」
笑ったかと思えば、次の瞬間にはしょんぼりするセリス。
レ・「まったく。危険だとは考えなかったのですか?」
「だって必死だったし、考えてる余裕なんて――…」
レ・「ほう……必死、ですか」
「うっ」
レ二―の目は明らかに据わっている。その視線に今度は湯気が出るほど真っ赤になってしまう。この感情の変化は見ていて飽きない。
レ・「だ、そうですよ? よかったですね、ジークさん?」
ジ・「う、うむ」
ジークはこそばゆそうに視線を反らしてしまった。なんと分かりやすい二人か……
レ・「まぁいいでしょう。とにかく至急城へ戻って国王に今回の事を報告してください。今道を開きますから」
ジ・「ちょっと待ってくれ」 
レ・「はい?」
ジークが静止し、レ二―は陣を描こうとしていた手を止めた。
ジ・「すまんが、俺達は歩いて行こうと思うんだ」
レ・「え……歩いて?」
ジ・「ああ。どうだ? セリス」 
「……」
別れはもうすぐそこまで来ている。なら一時(いっとき)でも多く、二人の時間を作りたい……セリスはそんなジークの想いをありありと感じた。それはセリス本人も望んでいる事だからかもしれない。
「はい、喜んで!」
ジ・「……と言う事だから、我がままを言ってすまんが今回は怪我だけ治してくれないか?」
レ・「――まったく、アナタ達は」
レ二―は「見てられません」と言った表情でため息をついたのだった。

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その後二人の怪我を治癒し、この事を報告しようと謁見の間へと足を運んだレ二―。
レ・「おや」
彼は扉を開こうとしていた手を止めた。廊下の向こうから歩いて来るあの二つの人影は……
デ・「お、レ二―じゃないか」
遠征に出ていたエルとデルタだった。
レ・「お二人共、いつ帰還したんですか?」
エ・「つい今さね。国王に任務についての報告しようと思ってねぇ」
任務から帰って来たというのに、二人は傷一つ負っていない。それどころか疲労の色すら窺えなかった。
レ・「その分だと、任務の方は滞りなく進んだ様ですね」
デ・「まぁな。今回の相棒は血の気が多くて、俺等九時の出番は全く無かったぜ」
エ・「あぁん? アタシ等の血の気が多いんじゃなくて、アンタ達の血の気が少な過ぎなのさ」
レ・(いや、血の気も多いと思いますがね……)
鼻を鳴らすエルを見てレ二―は思った。もちろんそれを口にするなんて事はしないが。
デ・「まぁ、俺たちゃその分楽出来たけどな。いいじゃねぇの、任務は遂行出来たんだからよ」
楽観的デルタはヒラヒラと手を振る。まぁこう見えていざという時にはちゃんと戦場に立つのを知っている。エルはそれ以上文句を言わず、視線をレ二―に向けた。
エ・「ところで、アンタはここで何してんのさ?」
レ・「僕も国王に報告する事がありましてね」
デ・「報告? お前が何を報告するんだ?」
レ・「アナタ達がいない間に、こちらにも色々と変動がありましてね」
二人・「変動?」 
二人は声を合わせて言った。

―――――――数分後。

デ・「そうか、あの二人仲直り出来たのか。よかったじゃねぇか!」
予想外な事にデルタは笑顔だった。レ二―の肩をバンバンと叩き喜ぶ。もうふっ切る事が出来たのか、それとも表に出さないだけか……
デ・「まぁ今回の騒動も結果オーライってやつじゃねぇか。喧嘩したままさよならなんて事になったらどうしようかと思ったぜ。な? エル」
レ二―とデルタは視線をエルに向けるが……
エ・「……」
レ・「エル?」
明るく振る舞うデルタとは反対で、エルの顔は明らかに険しかった。
エ・「デルタ、悪いけど結果報告の方を頼めるかい? アタシ疲れちまったから先に塔へ帰らせてもらうよ」
デ・「お? お、おお。そいつはいいけど……」
エ・「すまないね。じゃ、後は任せたよ」
そう言うと、エルは足早に歩いて行ってしまった。
レ・「見え見えですね。やっぱり言わない方が良かったのでしょうか?」
デ・「良いんじゃねぇの? いつかは知れる事だ。それにアイツだって分かってるだろうさ。――旦那が求めてるのは、自分じゃねぇって事ぐらい」
レ・「……」
なんとなくだが、そのセリフはデルタ自身に置き換えている様にも聞こえた。
デ・「アイツの事だ、変な気は起こさねぇだろう。俺達はちゃちゃっと報告の方を済ませちまえばいいのさ」
そう言うと、デルタは気にも留めずに目の前の大扉を開いた。レ二―は少しエルが気になったが、報告を優先しデルタの後へと続く事にした。
―――が、謁見の間に入った途端。
デ・「え? ――――えっ!!?」
レ・「アナタ達!」
王座前に立っている見覚えのある姿に目を丸くするデルタとレ二―。声に気づき、目の前の二人は同時にこちらへと振り返った。
ナ・「やっと来たか」
ス・「ふふ、待っていましたよ」
デ・「ナイル! それにスコルも!」
クロクラム城謁見の間に、なぜ流転国の指揮官殿と参謀殿がいるのか。あまりに唐突過ぎる再会に驚く二人。急いでナイルとスコルに歩み寄る。
デ・「どうしてお前等がこんな所にいるんだ!?」
ナ・「何をそんなに驚いている。一週間後に王女を迎えに来ると報告はしておいたはずだが?」
ナイルは「忘れていたのか?」と、眉をひそめた。
レ・「しかし、約束の日は明日のはずでは?」
ス・「フフ、討伐も無事に終了し、国は今安定期に入っています。ですので、女王の御計らいで一日御暇を頂けたのですよ。これを機にクロクラム国を見物して羽を伸ばそうかと思いましてね。――それに以前デルタ殿も仰ったじゃないですか。今度三人で酒を飲もうと……」
デ・「あ」
【全てが済んだらクロクラムへ招待するよ。今度三人で酒でも飲もうぜ?】
確かに、流転城へ向う前に約束していた。
ナ・「思い出したか? こうしてわざわざ我等から出向いてやったのだ。感謝して欲しいモノだな」
カチンッ!
デ・「お、お前……」 
平然と言うナイルに目元をピクピクさせるデルタ。なんだかんだで仲のいい二人――なのだろうか?
ス・「ところでレ二―殿」
火花を散らす二人(ほとんどはデルタだけ)をよそに、スコルが困った顔でレ二―に歩み寄った。
ス・「我々は国王に御目通りを申し出てここへ通されたのですが、入ってみても肝心のクロクラム王の姿が見られないのです」
レ・「いない? おかしいですね。普段はここにいるのですけど……」
王座を見るが、確かに国王の姿は無かった。一体どこへ行ったのだろうか。
ス・「そうなのですか? ここにいたのは幼い【少年】が一人だけでしたよ?」
レ・「そうですか、少年が――――――――――――――――少年!?」
ま、まさか。
そう、この二人はクロクラム王の【普段の姿】を知らないのだ!
ス・「この子なのですが……」
スコルは自分の背中にしがみ付いていた【少年】を掴み上げると、レ二―の前に差し出した。プラプラ状態の少年はまるで首を掴まれた子猫状態。
少年・「えへへっ」
レ・「あ……」
ニコニコ顔の【少年】を見た途端、レ二―は見事に顔を引きつらせてしまう。
ス・「一体どこから入ったのでしょうね? よりにもよってこの神聖な広間へ侵入するなど、見つかったら一大事です。もう二度としてはだめですよ?」
相手が誰かとも知らず、優しく少年に言い聞かせるスコル。
【彼】はひっつき心地がよさそうな人を見つけると誰かれ構わず飛び付くのだ。ちなみに、現時点で一番のお気に入りはジークの頭の上らしい。そしてもちろん言うまでも無いが、その差し出された少年こそ――
国王・「やっ♪ お帰り、レ二―!」
レ・「……国王」
プラプラしながらも元気よく手を振って来る国王に、レ二―は額を押さえた。
――そしてその間も、デルタとナイルの火花は散りっぱなしだったと言う……笑


〜つづく〜


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