絵師名簿No. 006583

シロガマ(自分の世界で浮遊中)

前編です

No. 006583 Last Update:2017/04/09 Registration date first time:2011/04/21 CT

お名前
シロガマ(自分の世界で浮遊中)
誕生日
04月25日
年齢
大人
性別
女性
地域
茨城県
使用道具
ペンタブ
描くの好き
男性の驚いた顔、照れた顔、三白眼
描くの苦手
女性、機械、その他いろいろ・・
絵のこだわり
表情豊かに。
希望感想
中辛:多少辛口でも感じたままにお願いします
貰って嬉しい感想
もらえるだけで///
レスに気付く期間
結構早い…かと。
重視するマナー等
親しき仲にも礼儀ありかな。
好きな漫画本
えとせとら
好きなゲーム
ワンダと巨像 ICO ペルソナシリーズ アンジェリークシリーズ 忍者龍剣伝TUV
大好きなアニメ
覇王体系リューナイト シャーマンキング 金色のガッシュベル うえきの法則 ケロロ軍曹 鋼の錬金術師 ワンピース  
好きな番組
ゲームセンターCX 逃走中 戦闘中
ぱちぱち
メッセージBox

シロガマの私書箱にメッセージを送る

name. pass.

皆様、こんにちわ、こんばんわ、もしくははじめまして!
シロガマ絵師名簿をご観覧ありがとございます♪

 
ビ―、ビ―…
 
「っ?」
制服伝いに小さな振動。等間沙希(とうまさき)は一瞬ドキッとし、ポケットに入っていた携帯に触れた。
(メール…。誰からだろう)
スカートから取り出す前に一度前方を確認する。今は授業中。教卓では白髪のインテリ風先生。芝先生(愛称:しばやん)が見事な発音で皆に教科書の内容を読み聞かせている。――誰もが頷くほどの見事な朗読だが、残念ながらその声に耳を傾けている生徒はクラス内の半分にも満たないだろう。ある生徒は教科書を目の前に立て、またある生徒は机下に隠して、堂々と先生の目の前で携帯をいじっている生徒もいた。うたた寝をしている者もいれば、頬杖をついてつまらなさそうにペン回しをしてる生徒も。ここまで誰も聞いてないとなんだか同情してしまう。――などと思いつつ、沙希本人も先生が黒板の方へ振り向いたのを見計らい、素早くポケットから携帯を取り出した。教科書を立てるとあからさまなので、机の下に隠し目立たない様にメールを確認する。
(送り主は…………満田先輩?)
メールの送り主、満田先輩。本名、満田影光(まんだかげみつ)沙希より一つ上の先輩、正しく言い直すと不良の先輩。ただ不良と聞くと、誰かれ構わず突っかかって行くイメージがあるが、彼は少し違った。相手から喧嘩を売らなければ大抵の人とは普通に接しているし、普段はそう怖い存在ではない。ただ、授業をさぼるのはいつもの事だし、学校は勝手に抜け出すし、先生達からすれば十分不良だった。
 
≪一緒に昼メシ食わない?≫
 
(お昼御飯? と言う事は、先輩今日は真面目に授業受けてるんだ……めずらしい)
真面目と言っても、本当に真面目に勉強に集中している訳ではないのだろう……。つまらなさそうに机についている先輩を想像すると、なんだか笑ってしまう。沙希はクスリと鼻を鳴らすと……
『何処で食べますか?』
――と、返事を返した。バイブの音を隠す様に手で携帯を覆うこと数十秒。一分もしないうちに再び携帯が震えた。
≪屋上。切崎が欠伸しながらサボるって言ってたから、たぶんそこにいる≫
(屋上―――『了解です』っと)
先生・「等間さん」
ギクッ!! 「は、はい!」
沙希が送信ボタンを押したと同時に名前を呼ばれ、彼女は反射的に立ち上がった。派手に椅子が音を鳴らし、皆の視線を集めてしまった。
先生・「153ページ、【3】を訳してみてください」
「あ、はいっ――えっと……」
先生・「あぁその前に、後ろへ隠した携帯はバッグへしまってください?」
ドキッ!―― 予想外の言葉に思い切り動揺してしまった。み、見られてたぁ///
「あ、あははっ……すいません」 
いつから気づいていたのか、さすが先生。多くの視線の中で注意を受けてしまい、沙希は恥ずかしさに顔をふせたのだった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
満田・「はっはっは! そいつは悪い事したな」
沙希の話しに、満田は笑いながら売店の焼きそばパンにかじりついた。一方の沙希は少し疲れ気味に自作弁当から卵焼きをつまみ上げ――
「はぁ。一度もこっちを見なかったのに、なんでバレちゃったんでしょう? あれはもう背中に目があるとしか思えません」
満田・「芝やんなぁ、俺も二年の時よく注意を受けたわ。どんだけ隠して弄っても必ず最後には注意を受けんだよ。しかもいつ気付かれたのかこっちからじゃ分からねぇし、注意して来る時も笑顔だから逆に怖ぇしな」
「そう! そうなんですよ!」――もっともな意見に私は身を乗り出す。
満田・「だろ? これはあれだな、卒業までの課題。芝やんにバレずにメール交換」
「あははっ、それは難しそうですね。―――って! 用も無く送って来ないでくださいよ!? 見つかって怒られるの私なんですから!」
満田・「なぁに、レベルが高い分、クリアした時の喜びが半端ねぇよ?」
「いりませんよそんな喜び! ダメです!」
満田・「だめ? ちぇ〜っ」
先輩は子供の様に口を尖らせた。こんな姿を見せられると、彼が不良とはとても思えない。
【彼等との関係は、帰り道に他校生に絡まれた沙希が満田達に助けてもらった事からはじまった。以来満田に誘われ、たまに行動を共にするようになった。沙希本人も嫌な感じはしていない。むしろ楽しくすらあった。きっと普段の彼女がしない事を彼等は経験させてくれるからだろう。……とは言っても、楽しんでいるのはいつも満田だけで、【彼等】…つまり【もう一人の先輩】は――】
「――起きませんね、先輩」
私は、柵を枕にずっと寝息を立てている【彼】に視線を移した。
?・「……」
隣で静かな寝息を立てているのは、【切崎 誠次(きりさきせいじ)――満田と同じ三年で彼の相棒である。白い髪が印象的で、いつも目元をバンダナで隠し、僅かな隙間から見せる眼つきは常に鋭く、無口で愛想も全く無い。喧嘩が大好きで、よく他の生徒ともめ事を起こしている。教師達、他校の不良達からも恐れられている要注意人物である。
「?」
ふと見ると、寝ている切崎先輩の頬に一本、ピッと、細く赤い線が見えた。
「傷?」
満田・「ん? あぁ、今日来る時にやったらしい。そん時のだろ?」
「……また、喧嘩ですか?」
満田・「1対5。しかも武器持参って……そいつら、確実に両手潰されたな。可哀想に」
「つぶっ……」
可哀想と言う割に全く同情の表情はしていない満田。しかし、今満田が言った状況でこの傷一本とは……沙希は改めて切崎の実力を知った気がした。
彼等と行動するとは言っても、沙希はこの切崎が少し苦手だった。酷い事をされるわけでも言われる訳でもない。むしろ沙希に対してはその逆なのだ。――相手にされない。彼があまりにも無口で、これまで殆ど口を聞いた事が無いのだ。話しかけても帰って来るのは一言。「あ?」とか「くだらねぇ」だのと、まるで無関心な返事ばかり。表情からは何を考えているのかも読めないので全く会話にならないのだ。だからいつも満田が間に入らないと彼と会話が成り立たない。
……。……。……。
満田・「――まだ慣れないんだ?」
「え?」
いきなりの言葉に沙希は箸を止めてしまった。満田は持っていた苺ミルクを一気に吸い上げ「ぷはっ」と一息。
満田・「切崎。――等間ちゃん、座る時いつも間に俺を挟むもんな」
「あ ………えっ、と」 
正直なんて返せばいいのか分からなかった。言葉を詰まらせている私に、満田先輩は苦笑して――
満田・「ははっ、そんなに怖がらなくてもいいだろぉ。普段ツンツンしてるが、コイツは根っからのワルじゃねぇよ?」
「あっ、違うんです! 別に切崎先輩が悪人と決めつけている訳じゃ!――ただ私、まだ殆ど先輩と口きいた事ないですし……私が話しかけても、なんだか迷惑そうで……」
満田・「それがいつものコイツ。誰にでもそうなんだって」
「誰にでも?」
満田・「そう、誰にでも。俺と会話してる時でさえ表情変えねぇだろ?」
「……」
彼の言葉に普段の二人を思い出してみる。確かに、相棒である満田先輩相手でも、切崎先輩は殆ど、と言うか全く笑わない。
「そう、言われると……」
満田・「ま、そう言う事だ」
「そう言う事……う――ん」 ――なんだか、先輩に上手く丸めこまれた気も……
満田・「安心しろって。――それに、俺から言わせればコイツ――」
 
?・「あぁ〜〜〜」
 
「っ?」
満田・「おっ」
彼が何か言おうとしたところで大きな欠伸が割り込んできた。声の方を向くと、切崎の目がゆっくりと開かれたところだった。
満田・「よう、起きたか。飯食うだろ?」
切崎・「…………………めし?」
ゆっくりと身を起こし首を摩ると、切崎の視線がゆっくりと差し出されたコロッケパンへと移る。だがその視線はすぐに――
切崎・「……」 
――その先にいた沙希に移された。
「こ、こんにちは…」――ううっ、先輩はただ見てるだけなんだろうけど、やっぱりこの眼つきは怖い。
切崎・「……」
無言で私を見た(睨んだ?)後、先輩の細い眼が今度は満田先輩に向けられた。満田先輩はコロッケパンをプラプラさせながら――
満田・「俺が誘った。いいだろぉ別に。お前寝てばっかで、昼は俺一人で寂しいのよぉ」
おどけた態度をとる満田先輩に彼はふんと鼻を鳴らすと、先輩の持つパンを軽く奪い取る様に受け取った。――これが本当に普通なのだろうか? どう見ても怒ってる様にしか見えないけど? 
「……なんか、すいません」 
満田・「いやいや、こんなのはいつもの事だって。一々落ち込んでたらコイツのダチは勤まんねぇよ? …なっ?」
切崎・「……」
満田・「素直じゃねぇ」
無言でパンをかじっている切崎に満田はやれやれと首を振った。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
満田・「そうだ切崎、帰りにゲーセン寄ってかね?」
全員が殆ど食べ終えたところで、満田が思い出したかのように言った。早々と昼を終えて再び柵に寄り掛かっていた切崎は細く目を開けると……
切崎・「ゲーセン?」
満田・「おう、駅の近くに新しいのが出来たんだとよ。新機種当然入ってんだろ♪」
切崎・「……」
あ、今切崎先輩タメ息ついた? ひょっとしてゲームに興味ないのかな? そう言えば、いつか連れてってもらった時も、満田先輩ばかりプレイしていて切崎先輩は見てるだけだったっけ。
「あの、切崎先輩はゲームしないんですか?」
切崎・「あ?」 
「えと、先輩のゲームをする姿ってなんだか想像出来なくて。前回も見てるだけだったし……」
切崎・「……」
聞いてはまずかったのか、私を見る目は今まで以上に細くなってしまった。――そ、そんなに睨まなくても……
切崎・「ちっ………くだら――」
満田・「なくはないだろぉ、切崎?」
切崎・「……」
吐き捨てようとしたところに、すかさず満田先輩が乱入してきた。 ?――切崎先輩今、満田先輩の言葉に顔をヒクつかせた? 不思議に思ってると、満田先輩はまるで噂好きの奥さんの様に手をひらひらさせた。
満田・「嘘はよくねぇなぁ切崎。等間ちゃんコイツさ、こんなナリしてすっげぇゲームヘタなんだぜ?」
切崎・「……ナリは関係ねぇ」
「え、そうなんですか?」――なんか以外な様な、納得な様な……
満田・「あそこまでヘタクソって……ぷぷっ、あれはもう一種の才能だな」
「ヘタな才能って……先輩、笑いすぎなんじゃ……」
切崎先輩が睨んでいるにも関わらず、満田先輩はゲラゲラと笑っている。そんなに酷いんだ?………でも、ゲームオーバーになって悔しがる切崎先輩の姿なんて中々見れないかも。
「うーん……」
満田・「ははっ! おい切崎、等間ちゃん今、もの凄ぉく『見てみたい』って顔してるぞ?」
「えっ!?」
いけない。思い切り顔に出ちゃってたみたい。満田先輩の言葉に切崎先輩の目がこちらに向いた。その目は明らかに「なに期待してんだ?」と言っている。
「す、すいません……」 
満田・「――と、いうわけだから、等間ちゃんも一緒に行くか!」
「え!?」
切崎・「……おい」
満田・「いいじゃん? いつか行った時も結構楽しそうだったしさ。等間ちゃんの出来そうなゲームがあるかもしれねぇよ? 今日は俺とバトルすっか!」
「無理ですよ! 私だって殆どやった事――」
満田・「いやいや、等間ちゃん覚え早いし、やるっつってもパズルやクイズ系。それとも、俺と格ゲーやる?」
「それこそ絶対無理です!」
満田・「大丈夫だって! 格ゲーは無理でも―――」
切崎・「……」
2人がアレコレと言い合っている姿を複雑そうな表情で見ていた切崎。だがその時――
切崎・「――?」
女子・「――って…―――でしょ?」
少し離れたところに、二人の女子が立っている事に気付いた。その二人は明らかにこちらを見ながら何やらヒソヒソと喋り合っている。その視線の先は――
切崎は苛立たしそうにその女子二人を睨んだ。睨みと言うよりはもう殆ど「きえろ」と言った脅しに近かった。その視線に気がついた女子達はびっくりし、怯えた表情を見せると、逃げる様に階段を下りて行った。
切崎・「……ちっ」
満田達は女子達の存在に気付く事無くまだ話し合っている。いい気なものだ。
満田・「――な? 行こうぜ?」
「うーん……でも……」
沙希はチラリと切崎を見た。彼が許してくれるのか気にしているのだろう。彼もその視線に気づき、ふいと目を反らすと――
切崎・「……いちいち俺の方を見んじゃねぇ」
「その…………お二人がもし迷惑じゃないのなら……」
満田・「お、決まり? よしよし、じゃあ放課後校門前な♪」
「はい♪ お願いします」
切崎・「……」
2人を見る切崎の目は、明らかに苛立ちを現していた。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
切崎・「何考えてやがる」
次の授業へと向かう沙希を見送る二人。遠ざかる彼女の背中を見ながら、切崎がボソリと呟いた。
満田・「何が?」
切崎・「なんで近くに置いとく?」
満田・「お? お前にしては『意外な質問』だな。んなの気に入ってるからに決まってんだろ?」
切崎・「……」 切崎の眉間にシワが寄る。
満田・「睨むなっての。お前の言いたい事は分かるよ? ただ俺は、己の感情に従順なだけさ♪」
誇らしげに鼻を鳴らす満田に――
切崎・「……お前、自分で言ってて恥ずかしくねぇのか?」
満田・「おっと、そうだ。――ほらよ」
切崎・「?」
切崎の質問は見事にスルーし、満田はポケットから何かを取り出すと切崎に差し出した。よく見るとそれは一枚の絆創膏。
切崎・「っ……」
満田を見る切崎の表情は明らかにドン引きだった。なんとその絆創膏は可愛い猫ちゃん柄だった。
満田・「ばかやろ、俺がこんな可愛いの持ってる訳ないだろ? あの子だよ」
切崎・「等間?」
満田・「お前が寝てる間にな。自分からじゃ受け取ってもらえないだろうからってよ。可愛いじゃねぇの」
満田はその絆創膏を素早く切崎の胸ポケに差し入れた。
切崎・「おい――」
満田・「じゃ、ゲーセン来いよ? お前が居ないと面白さ半減だからな」
それだけ言うと、満田も手をひらひらさせながら階段を下りて行った。
切崎・「……」
その後ろ姿を見送った切崎は、無理やり渡された絆創膏を取り出した。それはピンク色のトラねこが印刷されたキャラクター物。
切崎・「…………ありえねぇ」
彼はボソリと呟くと、再び柵に横になり、目を閉じたのだった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
6限目――気づけば、五分おきに時計を確認している自分に気がついた。集中しなきゃと再びノートに向き合うも、目は何分か置きに時計に行ってしまう。ゲームセンター。こんなにも自分は楽しみにしていたんだと、沙希は意外な自分に少し驚いた。
(それにしても、切崎先輩ってゲーム苦手だったんだぁ。動物好きだし、結構意外な面が多いんだね)
2人とまた少し二人の事が分かった気がする。そう実感すると自然と表情は緩んでしまう。
(――でも待って? もしも、もしも本当に私の方がゲーム上手だったら?)
なんだかオチが見えて来た。切崎先輩と対戦して偶然にも私が勝ってしまい、それを大声で笑う満田先輩。切崎先輩はこれ以上ない程不機嫌に――
(………。――ま、まさかね)
女子・「ねぇ、聞いた?」
――?
想い描いた展開にならない事を祈っていると、後方で話し声。女子達の会話が偶然沙希の耳に届いた。
女子・「お昼休みにさ、友人が屋上で見たんだって。――何でも、3年生の男子とご飯食べてたって」
――それって、私の事?
偶然耳にした話だが、沙希は気づいていないふりをしてその声に耳を傾けた。どうやら話しているのは沙希から斜め、後ろへ二列目の二人組の様だ。ヒソヒソ声ではあったが、幸か不幸か、なんとか聞き取れる微妙な距離だった。
女子2・「でもそれくらいは普通じゃん?」
女子・「それがさ、相手はあの二人組みたいよ?」
女子2・「えっ、マジ!? あの不良コンビ? あの子が?」
女子・「満田先輩はまだいいけど、あの切崎先輩とよく一緒にいられるよねぇ、信じらんない」
――やっぱり、私の事だ。
女子2・「切崎ってあれでしょ? 数日前に他校の連中と問題起こした……なんでも、ちょっと肩が触れただけで相手の顔面蹴り飛ばして鼻折ったとか。おまけに相手全員ボコボコにして財布も取ったとか!」
(え、先輩が財布を?)
一瞬ピクリと反応しまい、沙希は気づかれていないか焦った。だが二人は彼女の反応に気づく事無く話を続けている。
(そんなはずない。乱暴なところはあるけど、『アイツは金に興味ないから財布には手を出さない』って満田先輩言ってたもの)
女子・「見つけた子達、凄い顔で切崎先輩に睨まれたらしいよ? あの二人と楽しそうに笑ってたって言うし、この子案外そっち系じゃないの?」
女子2・「まさかぁ」
女子・「でもさ、普段真面目そうなのが意外に凄い事してるんだよ。この子もあんな風にしてるけど、結構猫かぶってたりして――」
女子2・「っていうか二股? どうやってあんなの手なづけたんだろ?」
「っ……」
噂とは悲しい事に、どんどん個人個人の『とりたい様に』とられ、広がって行くものだ。
女子・「それがそうでもないみたいよ? もう一人、なんて言ったかなぁ。あ、ほら、三年で色黒の、短髪の人。バスケ部にいる――」
女子2・「色黒、短髪……あっ、逆撫先輩?」
女子・「そうそう! あの人とも楽しそうに歩いてたって隣のクラスの子が言ってた」
女子2・「うわ、三股? ありえない。逆撫先輩絶対騙されてるね、それ」
リーンローン、リーンローン……
「っ……」
鐘の音に我に返った沙希。ノートに視線を落とすと、いつの間にかペンでギリギリと力を込めた黒い点が出来ていた。もしもこの時、授業終了の鐘が鳴らなければ、彼女は授業中にも関わらず後ろの女子にひとこと言っていたかもしれない。鐘により辛うじて平常心を保った沙希。だがあまりの怒りに、彼女はペンを握ったまましばらく動く事が出来なかった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
「先輩はそんな事しない。誤解されそうではあるけど……」
下校時刻。その日ゴミ当番だった沙希は、一人ゴミ箱を抱えて体育館裏の焼却炉へと歩いていた。その表情はいまだ暗い。先ほどの女子の話しが頭から離れなかった。自分が二股、三股しているという話も酷いが、それ以上にあの女子達の切崎への認識。「あんなの」とか「手なづけた」とか、あまりにも酷過ぎだ。
「っ……いけない。急がなきゃ、先輩達もう待ってるかも」
まだ気は晴れないけど、この後先輩達との約束がある。今は急いでこのゴミを――
ッ!―――ッ!!
「?」 
駆け出そうとした時、何か鈍い音が聞こえた。なんだろ、この音。
!――ドッ!
「――この先から?」
物音は丁度焼却炉方面からだった。この角を曲がったすぐ先。
「誰かいるんです――」
ドォッ!!
「っ!?」
曲がり門から沙希が顔を覗かせた瞬間、何かが凄い勢いで目の前を横断した。それはすごい音を立てて体育館の壁へと激突し、ズルリとうなだれた。――――人だった。
「大変!」
男子・「っ……」
倒れ込んだ男子の顔は酷く腫れ上がり、歯は折れ、口からは血が垂れていた。茶髪のピアス。恐らく彼もそっち系だろう。苦しそうに呻いている。
「酷い、誰がっ―――……」
急いで駆け寄った沙希だったが、すぐ後ろに立っているもう一人の存在に気づくと、また、それが誰かと認識した瞬間、言葉を失った。
切崎・「……」
後ろで、切崎が冷ややかな笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。
切崎・「……等間か」
「切崎先輩……」
冷ややかな笑み。そう、切崎が唯一笑う瞬間、それは相手を痛めつけている時。その手は相手を殴り続けていた証として、血で所々赤く染まっていた。その拳に沙希の視線を感じた切崎は、「ああ、これか」といった感じで拳を見ると、誇らしげに手の甲を沙希へと向けた。先輩が喧嘩好きな事は知っていたけど、やられた方のこの姿はあまりにも――
「先輩!」
切崎・「やり過ぎとでも言いたいのか?――ガキの喧嘩じゃねぇんだ」
そう吐き捨てると、彼はゆっくりと沙希達の方へと歩み寄り、壁にうなだれた男子を見下ろした。横から見上げた切崎は明らかにいつもの目をしていなかった。いつも以上に鋭く、狂気に満ちた目。怖い。身震いするほど。
切崎・「…起きてるか?」
男子・「……」
男子から返事はなかった。二人が話している間にどうやら気を失ったらしい。それを見た沙希は安堵した。気絶してしまえば、いくら先輩でも手を出さないだろう。安堵の息を漏らした瞬間――
ドッ!!
「っ!?」
切崎の舌打ちが聞こえたと思った瞬間、なんと彼は気絶した男子生徒のお腹を乱暴に蹴り上げたのだ。声こそなかったが、飛び散った彼のヨダレには赤い物が交じっている。激しく身を弾ませた彼は、再び力無くうなだれた。彼等と接するまで、暴力沙汰には全く縁のなかった沙希には、それはあまりにも衝撃的な光景だった。
切崎・「そっちが【売ってきた】んだろ。のびてる場合じゃねぇぞ?」
ドッ!――そのまま蹴り上げた足でお腹を踏みつける。だが――
「!」
その足はすぐに沙希の手によって押し戻された。彼の冷たい視線が沙希に向けられる。沙希自身、今の切崎に反抗するのは本当に恐ろしかった。脚を掴むその手は震え、目には今にもこぼれそうなほど涙を溜めていた。だがその目は真っすぐに「やめてください」と訴えている。
「……ッ…これ以上やったら、死んじゃいます」
切崎・「死ぬ?……そんな簡単に逝ってたまるかよ――――っ!?」
再び脚を浮かせようとした切崎だったが、沙希の細い手が更に強い力で彼の脚を掴んだ。
切崎・「……」
「っ……」
……。 ……。 ……。
どのくらい睨み合っただろう。長い沈黙ののち、切崎は屈み気味だった背筋を伸ばした。――
切崎・「……そぅいや、ゲーセンだったな」
ボソリと呟くその表情はいつもの彼に戻っていた。沙希はこの事態を受け入れる事が出来ず、今の一言が耳に入っていなかった。ただ、震える手で必死に切崎の脚を押さえている。
――次第に、押さえていた脚が彼女の手を離れて行き、沙希は急いでそれを目で追った。その脚は数m先に落ちている、あるモノへと歩み寄って行く。
「っ……」
歪んだ視界の先に映ったもの。それが何か分かった瞬間、女子達の言葉が何度も頭の中で繰り返された。
 
女子・≪相手全員ボコボコにして、財布も取ったとか!≫
 
乱闘中落としたであろう男子生徒の財布。それを拾い上げる切崎先輩。――嘘だ……先輩はそんな事しないって――
沙希の望みを裏切る様に、彼は平然と財布を開け、中から札を何枚か抜き取った。その財布を気絶する彼の脚元へとほおり、沙希に向かってワザと金を見せびらかす。沙希はもう、呆然とその光景を見ている事しか出来なかった。
切崎・「喧嘩を売る相手はよく選ぶんだな。なんならセンコウに泣き付いてもいい。『切崎君にお金取られちゃいましたァ。取り返してください』ってな」
まるで虫けらを見る様に嘲笑う切崎。盗ったお金をポケットにねじ込み、ゆっくりと歩き出す。
「っ……先輩!」
それまで落胆していた沙希だったが、彼が横をすれ違った瞬間、はっと我に返り急いで彼の裾を掴んだ。過剰暴力の上にお金を取るなんて、これではホントに――
――パシッ!
だが、彼の裾を掴んだと同時にその手をはたかれてしまった。一瞬置き、ビリッとした感覚が手を襲う。
「っ!?」
――痺れに気を取られていると、ずいっと先輩がこちらに歩み寄って来た。沙希は無意識に後ずさっていた。自分を見下ろす冷ややかな切崎の目を見て、一瞬、自分もあの男子の様になると思った。これまでの切崎の行動からしてあり得ない事ではないと思ってしまっている自分がいた。いつもはこんな拒否反応は出ないのに――
「っ……せん、ぱ――」
いつの間にか壁に追いやられてしまい逃げ場を失った。ただ身を震わす事しか出来なくなった沙希に、切崎はギリギリまで歩み寄ると……
切崎・「……俺達にどんな印象を持ってたか知らねぇが、たった一度助けたくらいで友達気どりか? ――自惚れんじゃねぇ。ウザいよ、アンタ」
「っ……」
低い声でそれだけ吐き捨てると、彼は鼻を鳴らして裏口の方へと歩いて行ってしまった。小さくなって行く後ろ姿を呼び止める事も出来ず、沙希はただ立ち尽くすだけだった。
「……」 ――沙希の中で、切崎への認識が大きく塗り替えられて行く。
ただの喧嘩程度だと何処か軽く見ていた。でも、あんな事を平気でするのが不良で、切崎先輩。……世界が違う。私の様な凡人が彼と友達なんかになれる訳ない。彼等の行いを、彼等を受け入れられる訳無かった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
その数分後の事――
裏口の横には焼却炉があった。既に火は灯されており、煙突から黒い煙、蓋も開いてパチパチと炎が音を立てていた。
先生・「ふぅ、これで燃やす分は全部だな」
そこへ今日の焼却担当である先生が燃やす物を抱えて戻ってきた。焼却炉の横にドサリと荷物を下ろすと――
先生・「ん?――これは……」
焼却口の真下に、紙切れが一枚落ちているのに気がついた。拾い上げると――
先生・「一万円?――何でこんなところに……」
 
―――――その日、校門で待つ満田の元に沙希が現れる事は無かった。
 

〜あいさつ〜
こんにちわ。切崎編前編、ここまでご拝読なさってくれた方々、ありがとうございます^^
必要以上に人を傷つけない。お金は取らないと言う他の不良とは少し違うタイプだからこそ沙希は彼等と居られたのに…
実は根っからの悪だった彼にショックを受けたと言う話です……
【後編はまた一ヶ月〜二ヶ月後】です。よろしければまたご拝読してやってください。
 

 

 
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