絵師名簿No. 007526

WhiteB(しろくま)

話 更新(誤字脱字注意)

No. 007526 Last Update:2021/07/19 Registration date first time:2014/04/11 CT

Web
お名前
WhiteB(しろくま)
誕生日
01月18日
年齢
20〜29才
性別
女性
使用道具
ペンタブ
描くの好き
青年、女の子
描くの苦手
動きのあるもの、手
絵のこだわり
バランス
希望感想
甘口:欠点指摘不要。お手柔らかにお願いします
レスに気付く期間
割とこまめに見てますが、返信の内容が中々決まらず遅れることが多々あります。
重視するマナー等
誹謗、中傷ダメ絶対。
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 ソース元:学生戦争ったー ttp://shindanmaker.com/293610 
 更新速度:更新停滞中
 
***********************
2ページ目から宗教学戦の続きだよ!
いつも以上に文章見返してないので、滅茶苦茶でも笑って流してください!
 
あらすじ
見習い天使三人と暮らしていた七希。ところがある日突然司場が眼を覚まさなくなってしまった。しとりんと透君の助けも借りて原因を調べてみたが何も分からない。そんな5人の前に一人の悪魔が現れた。悪魔の提案で司場の精神世界に夢の中から入ることに。静間に銀時計を渡され、凜道に手を握られ、林檎をかじって夢の世界に入った七希。うっかり記憶に引っ張られて死にかけるも、大きな姿の司場に助けられ二人で精神世界の調査に向かうことになりました。
 
後は練習にかいた司場と静間置いときます。(最近静間が隻眼じゃないのは、片目だけだとバランス練習にならないので描いているだけです。)
 

「んー」
 
街の記憶を抜けてからは、見たことない景色がいくつか広がっていた。港町の景色や、月夜の廃墟、雪の積もった大きな橋がある街。私の知らない場所。私に会うより前に司場さんがいた場所。私の知らない街で記憶の補完が効かないからか、市場の時と違い人の姿はどこにも見えなかった。
そして今の場所は、夜の森の中。川が近いのか水の流れる音がする。森に響き渡るフクロウの声に対抗するように、司場さんはさっきから唸り続けていた。
 
「どうしましたか?」
「・・・扉の位置が分からない」
 
司場さん曰く、断片的な記憶同士が扉で繋がっているので記憶と違うものがどこかから聞こえたり、臭ったりすると大体別の記憶の扉から漏れている物らしい。それにここは司場さんの意識の中なので、司場さんには五感とは別になんとなく扉の方向が分かっていたらしい。
 
「中心に近づくにつれて、記憶は混ざり無意識や深層意識に行くから境界が不明瞭になり扉の気配が感じ取りにくくなるとは思っていたが・・・少し早いか?」
 
そうぶつぶつと呟きながらも扉を探しているのか、私には何も見えない暗い森の奥の方をじっと見つめている。
自分も何か見つけられないかと、司場さんと反対方向の木々の中に目を向ける。
 
「ん?」
 
変わったものはすぐ見つかった。数メートル離れた木に大きなうろがある。大きな穴が存在感を放っているが逆に、今まで見落としていたことに首を傾げる。
 
(こんなのさっきまであったっけ?)
 
ちらりと司場さんの方を見ると他の探知を試しているのか、地面になにか描いている。邪魔しては申し訳ないので、すぐ近くなのもあるので一人でうろのある木に近づく。
恐る恐る覗き込んでみるが、何も見えない。
 
(真っ暗だ・・・わ!)
 
暗い底の方から突然、風が吹き出した。嫌なにおいが鼻に付き、思わず手をあてる。あわててうろから身を引くが勢い余って近くに尻もちをついてしまった。何の匂いか考えている刺激臭で回らなくなった頭に、うろが扉の可能性が浮かび上がる。
 
「司場さん、これ、扉じゃないですか?」
 
少し離れた位置でしゃがんでいた司場さんがこっちを見てくれた。立ち上がってこっちに歩いて、いや走って―
 
「離れろ!七希!」
 
司場さんの大きな警告が耳に届いたのと、うろに吸い込まれるように大きな風が自分の体を持ち上げたのはほぼ同時だった。
 

 

 

 

 

嫌なにおいだ。刺激臭だからなだけじゃない。私はこれが嫌なものだとよく知っている。
 
血の匂いだ。
生き物が腐りはてた匂いだ。
酒の匂いだ。
咽かえるような香の匂いだ。
淀み切った死の匂いだ。
 
強烈な匂いが記憶を鮮明に思い出させる。
 
指先が冷えていく。暗闇から形を取り、現れた光景は忘れたくて仕方がないあの場所だ。
目の前の冷え切った鉄格子も。
当たり前のように存在する渇いていない無数の血だまりも。
天井からつるされたかつて人だったそれも。
生を奪うためだけに作られたような斧も。
 
「・・・!」
 
耳を塞ぐ。目をつぶる。ふるえる喉で深呼吸をする。
 
ちがう。ここは記憶だ。記憶。幻。怖くない。大丈夫。大丈夫。
 
耳を抑える手に力がこもる。頭が締め付けられて痛みが届くが緩められない。
緩めたら最後。聞きたくないものが、聞こえてしまう。
 

 

 

 

 

強張った手を誰かがそっと包み込んだ。
 

「大丈夫だ。」
『もう、大丈夫だ。』
 
地獄のようなその場所で、そんな力強く優しい声をかけられたのは二度目だ。
耳を覆う冷え切った指先を、声と同じように温かい手が握る。
もう片方の手が自分の肩をつかみ無理やり引き寄せられた。顔に誰かの体があたる。
 
「そのまま深呼吸だ。・・・そうだ、いい子だ。何でもいい。楽しかった思い出を考えろ。ベーコンでもいい。天使の輪・・・ドーナツ屋の名のことでもいい。すぐ扉を見つける。」
 
言葉通りに私を抱きかかえると、司場さんは私に言葉をかけ続けた。肩に置かれた、少し痛いくらいに力のこもった手から伝わる熱が恐怖の感情を薄めていってくれるのが、わかった。
 
「・・・ここか!」
 
全力で探してくれたからなのか、その言葉が聞こえたのはすごく速かった。カツカツと私を抱えているにもかかわらず遅くなることが決してなかった、早歩きにさらにスピードが乗る。
 
ガシャン シャン シャン
 
派手な金属がぶつかる音と、余韻が耳に届いたがそれもすぐ遠ざかっていった。
鼻に残っていた、悪夢の香りも嘘のように消えていった。まだ動きが鈍い体を捻りほんの少し景色を視界の端に入れる。薄い灰色の世界を視界に入れているうちに、そこが霧の中なのだと結論が出た。そしてその結論が出るころ、ようやく私を抱えたまま霧の中を歩き続けていた司場さんは道の端にあった石造りにみえる床の段差の上に降ろしてくれた。
 

「すまなかった」
 
降ろして、膝をつき、私が生きているのを確かめるようにじっと手首をつかんでいた司場さんがそう呟いた。眉が顰められたその顔は、自分を責めている時の司場さんの顔だった。
 
「分かっていたんだ。記憶をたどればあそこにたどり着く可能性があることを。」
 
あそことは、さっきの場所だろう。地下の祭壇。私と司場さんが初めて会った場所。
 
「俺とお前の共有した記憶の扉が見つけやすいことも、あれが記憶として間違いなく残っていることも、分かっていて、気を付けていたが、それでもお前をあそこに連れて行ってしまった。」
 
司場さんが私の右手を両手で握り込むと、俯く自身の額にあてる。
 
「守りたいのに。俺はいつも間違える。」
「司場さん・・・?」
 
絞り出したようなか細い声から聞こえた言葉は、いつもの司場さんからは聞けそうにもない弱音だった。まだ少し動きが鈍い頭を回転させて、何か言葉をかけたかったが何も出てこない。沈黙がいくらか流れると、司場さんが大きく息を吐いた。
 
「今のは忘れてくれ」
 
吐いた息に弱い心のすべてを乗せて捨てたかのように、いつもの司場さんらしいどっしり構えた声音に戻っていた。
 
「そろそろ行けるか?」
「・・・はい!」
 
さきほどの弱気な司場さんの影がまだ脳裏にちらつき、これ以上不安をかけさせまいとできるだけ元気に聞こえるように声を出した。
立ち上がって辺りを見回すが、相変わらず霧は濃い。
 
「ここはどこなのでしょうか?」
「・・・視界が不明瞭なのはおそらく、記憶の世界が形どられていないから。ここは有意識と無意識の境界線だ。」
 

司場さんが私の右手を取って歩き出しながら説明する。
 
「今俺たちは記憶を遡る形で、魂の中心に向かっている。蓄積された記憶は選別され、強い物は刻まれ、弱い物は消え、より強いものは記憶が褪せようとも残るよう魂の中心にしまわれる。それが無意識の領域。人格そのものを形成する場所。昏睡の原因はおそらくそちら側にある。」
「境界線・・・ということはここを越えればそちら側へいけるのですか?」
「そうだ。・・・といいたいが、おそらくそれは簡単じゃない。無意識の領域は文字通り認識の外の領域だ。今までのように明確な扉が存在してない可能性が高い。」
 
さらにと司場さんが続ける。
 
「俺はともかくお前には別の危険が出てくる。無意識の領域まで落ちれば流石に魂の防御機構に攻撃される可能性がある。」
「防御機構?」
「体に免疫機能があるように、魂にも異物が入り込んだらそれを防ごうとする防御機構が存在する。魂の中枢の無意識の領域に踏み込めば、いくらお前でも防御機構に気づかれる可能性が高い。」
「つまり・・・私はそこにいけない・・・のですか?」
 
司場さんを困らせてはいけないのは分かっているが、聞き返した声は、自分が司場さんの魂に入り込んだ異物という事実とここまで来てという感情で、自分でもわかるくらい落ち込んでいた。そして司場さんも勿論わかった。
眉尻を下げた困った顔で少し微笑まれた。
 
「そんな顔しないでくれ。大丈夫だ、すぐに戻ってくる。」
 
もう隠して危険な目に合わせたくないんだ、と続けられると先ほどのこともあって頷くことしかできなかった。
 
「見送りだけでもさせてくださいね」
「・・・ああ。・・・っと、霧が。」
 
司場さんの声に先の方に眼をやると、確かに霧が薄く景色がぼんやり見える。手を引かれながら、霧を進むとその景色は大きくなりそして緑色の地面を踏み始めたところで今度は霧が一気に消えた。
 
「ここは―」
 
見たことのない景色だった。色のついた雲が地面すれすれをとび、草原には雲と同じように色とりどりの花が咲いている。空は薄ピンクのような、オレンジ色のような温かみのある色でその空を、見たことない鳥が飛んでいる。
見たことはない、けどここがどこだか、決して自分が生涯見ることはできないだろう景色ですぐにわかった。
 
「天界?」
 
答え合わせのようにつぶやいた傍から、自分の視界を大きな羽が通り過ぎていく。慌てて眼で追うと、薄い金髪を長くたなびかせた長身の人が背中についた羽を大きく羽ばたかせ飛んでいた。
 
「天使―」
 

本の挿絵でしか見たことないような映像が目の前で起きており、しばらくただ茫然と魅入っていると司場さんから声がかかった。
 
「天使三人と同居している割に新鮮な反応だな。」
「あ、えっとすみません。大きい羽はあまり見たことなくて。」
 
迫力が違うという言葉はなんとか飲み込んだ。頭の隅っこに、小さなはねをパタパタさせながらふくれっ面した凜道がちょっとよぎった。
 

 

 
白く舗装された石畳をゆっくり歩いていく。どこまでもきれいに整えられた草原と花畑、たまに真っ白なオブジェや噴水も目に付くがそれ以外には特に建物は見当たらない。
 
「ループしてるな」
 
司場さんがふいにそう呟いた。そして私の方に顔を向けると説明を始めた。
 
「空を何度か見ていたが、一定の距離を歩くと雲の位置が元に戻っている。一定の空間より外に出ると戻されているようだ。となると境界線への扉はこの中にあるとみていいか。」
「扉の位置分かりますか?」
 
そう訊ねると、司場さんは周囲を見渡して難しい顔をした。
 
「全く分からない。これはしらみつぶしでいくしかないかもな。」
 
その答えに、内ポケットに入っている時計を握る。
 
「あの司場さん―手分けして」
「駄目だ。」
 
少し迷いながらそう切り出しはしたけど、即却下された。
 
「でも、時間かかりますし」
「駄目だ」
「一緒に結構歩きましたが、危なそうなところはなかったですし」
「それで一度危ない記憶に落っこちただろう。」
「ここは落ちようがないですし」
「急に天地がひっくり返らない保証はないぞ」
「・・・」
 
どうしよう。全く聞く耳を持ってくれない。静間君からのタイムリミットの件もある。時間が来るまでにできればその扉を見つける手伝いくらいはしたい。
そんな考え見透かされているのか、司場さんから先に提案があった。
 
「・・・手分けしてもいいぞ。」
「本当ですか!」
「ただし探す範囲はこちらが決めるぞ。絶対に、そこから離れるな。」
 

 

 

「たしかに、はい、とはいいましたが・・・。」
 
折角の譲歩案を蹴るのはもったいないと承諾したが、受け持った範囲はさっき二人で歩いた歩道の一部と道の途中の噴水だけ。広さで言うならいつもの教会とその周りのちょっとひらけた森くらい。もっと言うなら端から端まで普通に見通せる範囲だ。
 
「さっき探した場所だけじゃないですか・・・」
 
当の司場さんはというと、上から探すと言って何故か普通に浮いて空を飛んで行ってしまった。ここは司場さんの意識の中だから飛ぶくらいわけないのかもしれない。ちょっとためしに、ジャンプしたが勿論足は地面へとすぐ帰っていく。そもそも飛べたとしても、範囲の外に出たら間違いなく司場さんにばれる。何かしたとかされとかないが、何故かそんな気がした。
 
「これ飛ぶのにつれていけないから、置いて行かれただけじゃないかな。」
 
噴水に腰掛けながら、一人でぼやく。念のための捜索もすぐ終わってしまい、今度は暇という問題が出てきた。風景も最初こそ目を奪われるほどの美しさだと感じたが、時間がたてばたつほど代わり映えのない景色に申し訳ないが飽きが来た。仕方がないので今は、この空間で数少ない動いているものとして、横で同じように噴水に腰掛けている天使を失礼ながら観察していた。天使はずっとここで本を読んでいるようで、一度目司場さんと歩いて通過した時もずっと本を読んでいた。
まったく動かない上、似たような噴水はそこらへんにあるのでわざわざ「この天使のいる噴水」と動いて良い範囲を指定されたくらいだ。正直指定されなかったら、噴水の見間違いをしたと言い張って探すつもりだったので残念だった。
 
(たぶん天使だから美人さんだよな)
 
長くストレートの綺麗な黒髪。背中から生えている真っ白な二枚羽や本をめくる手先まで、普段じゃ到底できないぐらい観察させてもらう。
 
(うーん、羨ましくなるくらい手綺麗だな。細い、白い、長い。羽もいいな、ふかふかしてそう。)
 
お日様にあたって、キラキラしている羽は添わり心地がとても良さそうに見える。
 

何回か逡巡したが、そーっと羽に手を伸ばす。触れられないのは分かっているし、触れられたらそれはそれでまずいのも分かっているが、それでも試してみたくなるくらいにはふかふかな羽からの誘惑がすごかった。
後数ミリで触れられそうというところで、天使がパタンと本を閉じた。
思わず手を引っ込めるが、勿論こちらの不埒な行いに気づいたわけではなくただ一休みという様子で、立ち上がって伸びをしている。
簡単な運動を済ませると、天使は懐から銀時計を取り出し何かを確認しているようだった。
 
「――あれ?」
 

 

 
司場さんが空から戻って来たのは、体感でそれから十分後くらいだった。
 
「・・・やっぱり、待たせたみたいだな。」
 
天使がふたたび読み始めた、本の中身でも読めないかと覗き込んでいる私を見つけた司場さんは苦笑いしながらそう声をかけてきた。
 
「大丈夫です。彼女に相手してもらってましたから。」
 
そういいながら天使から離れて立ち上がる。
 
「それは彼女に礼をいわないといけないな。」
 
司場さんは噴水に腰掛ける天使を眺めながらそう返した。
 
「・・・」
「でだ、七希。待たせてすまなかったが、上から探してもやはり見つからなくて―?」
 
司場さんは捜索の結果を話そうと近づいてきたが、私が後ろに下がる、司場さんから距離を取ろうとする動作をしたことで足を止める。
 
「七希?」
「司場さん前にいいましたよね?記憶には抜けがあるから細部までの再現は難しいって。」
「・・・ああ」
「でも、教会の凜道と静間君の顔は私にははっきり見えました。なせですか?」
「それは当然記憶があるから―」
「そうです。記憶があれば、覚えていたら分かるんです。だから―」
 

 

「司場さん、なぜ彼が分からないんですか?」
 
司場さんが待ち合わせに指定した噴水に腰掛けた天使を指さす。黒い長い髪が風に揺られている彼の顔を私はよく知っている。
 
「なぜ静間君の顔を覚えていないんですか?」
 
私の眼にはすでにはっきりと噴水の天使の顔が映っている。透き通った緑の眼も、整った鼻も口も、年齢の差異はあっても間違いなく静間君の顔だ。
私の言葉に司場さんの―彼の顔が静間君の方を向く。光を背にしているからかなのか、影のかかった彼の表情は読めない。
一瞬湧いた、ためらいを押し込んで言葉をつづける。
 
「それにもう一つ。なぜあなたは天使の輪を。私が考えていたドーナツ屋の店の名前を知っているんですか?私はあれを誰かに話したことは一度もないです。」
 
天使三人の前で「天使」の名を借りるのはさすがにどうかと控えていた名だ。紙に書くことすらしていない。なのにこの人は知っていた。
目の前にいるこの人は知っているはずのことを知らず、私しか知らないことを知っている。
 
「あなたは、一体誰なんですか?」
 

 

しばらくの間があった。
 
「いつだ?」
 
日常会話で投げかけられるような、いつも通りのままのような声音が沈黙を破った。
 
「違うな―。何故静間に気づけた?」
 
変わらない声音が―、いつもの司場さんと変わらない声が、逆に背中に汗を伝わらせた。話を聞きだせていない以上会話を切るわけにはいかない。ポケットに入れっぱなしにしていた左手を彼の前に出す。
 
「銀時計。」
 
静間君が出る前に持たせてくれた時計だ。
そしてそれと全く同じものが、噴水の天使の懐で時々ちらついている。
彼にはそれで十分だったようだ。私の時計と静間君の時計を見やると、そうか、と小さくつぶやいた。
 
「―やはりお前は察しが良すぎるな」
 
少し低くなった声音に咄嗟に後ずさりをしようすると、指がパチンと鳴る音がした。
 
「!?」
 
足が一歩も動かない。その場で縫い付けられたように止まっている。
彼の方に顔を向けると、困ったような、苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。軽くため息をつくと彼はゆっくりこちらに近づいてくる。
 
「教会に置いていくことも考えはした。だがあそこはお前の記憶に近すぎてな。連れていく方が危険が少ないと思ったが、そうか静間か。」
 
なんとか動かそうと手で足を引っ張るがびくともしない。石になったかのような自身の足先のそばに影が一つ落ちる。
おとがいに手をかけられ無理やり上を向かされる。暗く深い赤色の眼色はどこまでも冷たそうに見える。
 

「そんな顔しないでくれ。」
 
けどどうしてだろう。
 
「怖がらせるつもりも、傷つけるつもりもないんだ。」
 
彼の赤い眼にはまだ司場さんと同じ優しさが見えてしまう。
 

 
大きな手が腰にまわされて、体を引き寄せられる。ほぼ真上を見上げる形で、彼の顔と向かい合わされる。影の落ちた暗い赤眼と目が合うと、頭にぐらりと強烈な眠気が来た。
この感覚には覚えがある。
ここに来る前、悪魔からもらった林檎を食べた時と同じ感覚だった。
 
「離し・・て」
 
なんとか口を開こうとするが、もう碌に動かない。なんとか眼から逃れようと顔を動かしても、力づくで抑えられているわけでもないのに、動かない。
私の小さな抵抗など意に介さず、彼は私の頭をゆっくり撫でた。
 
「大丈夫だ。次目覚めた時には全部終わっている。」
 
小さな子供に言い聞かせるように、紡がれた優しい声音が一押しだったのか、何とか開けていた瞼が勝手にゆっくりと降りていく。赤から黒へ。
 
(全部終わる・・・?)
 
眠りに落ちる間際のまどろみのなかで、ゆっくりと最後に聞こえた言葉が反芻される。
 
(だめだ)
 
何がだめなのか分からない。思考は碌に回らない。それでも自分の何かがそう叫んでいる。
 
(それだけはだめだ)
 
起きなきゃいけない。動かなきゃいけない。動いて。起きて。
 
(起きて!!)
 

視界が黒から白に変わる。急に飛び込んできた白は石畳でも太陽の光でもなかった。
左手に走った大きな電流の光だった。痺れと痛みで嫌でも眠気が吹っ飛ぶ。
 
「・・・っ!!」
 
痛みで一瞬息が止まるが、それでも頭はきちんと動いていた。痛みを堪えて息を吸い込むと、左手を大きく目の前にいる彼へと振った。
もう一度閃光と共に強烈な電撃が走る。今度は私にじゃない、私の左手に触れた彼の手にだ。バチンっと大きな音と衝撃が発生すると、自由になった体がその反動でぐらりと後ろに傾いた。揺れる視界の中で、少々焦げた自身の左手を抑える彼の姿が見えた。が、それもすぐに水の壁でゆがんだ。
 
視界の情報に遅れて、大きな水飛沫の音が届いてすぐ消えていった。
噴水に落ちた。本来なら、落ちてもすぐ底に付いて浮くはずだが、そのまま沈んでいく。
 
(・・・)
 
かけられた眠りの魔法のせいか、そのあと起きた光の衝撃のせいか頭がうまく働かない。体も上手く動かせない。いつのまにか、噴水に落ちたとは思えないような広い広い水の中をただ漂っている。
 
(眠たい)
 
遠くなった水面からチラチラと差し込む陽光をぼんやり眺めながら私は意識を手放した。

親ばかです。 黒好き同盟 オリキャラclub!同盟

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